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2005年06月17日(金曜日)

長い長い花束の物語

050617kawag2.jpg6歳の頃から10年ばかり、ピアノを習っていました。最初の数年間は楽しいお稽古ごとにすぎませんでしたが、後半は音大への進学が視野に入ってきたため、それは苦しい試練に変わりました。

毎年夏の全国音楽コンクール。難易度が高くなっていく課題曲。舞台そでで自分の番を待っているあいだは、暑いのか寒いのかわからなくなるほど張りつめています。まぶしい照明を受けて光るピアノの前に歩いていき、鍵盤に手を置いたら頭の中がまっしろでひとつの音も降りてこない…という悪夢を、今でもたまに見るのです。

結局は、ピアノのミューズは私には微笑んでいないと思い知り、その道に進むことはせずにこうして毎日ぼんやりしているわけですが、その10年あいだの毎日の努力は、根っから怠けものの私の人生の中で輝く宝物になりました。

ピアノのN先生はご夫婦二人で教えていらして、もとは東京で生活していたのが、当時、事情により茨城に移っていました。その町で教え子となった私は、N先生にとてもかわいがっていただいたようです。「ようです」というのは、先生はお二人とも大変に厳しくて、毎週のレッスンの出来が悪いと容赦なく叱責されたからです。

私がピアノをやめた数年後、いとこが同じN先生のレッスンを受けましたが、先生もお年を召して、教え方がずいぶん優しくなったと聞きました。

つい先日、茨城の母から電話がありました。N先生が私の実家に電話をかけてきたというのです。母が聞いた話によれば、ご高齢になられたN先生はピアノを教えるのをやめ、東京に戻って二人暮らし。ご主人は耳が不自由になり、奥様は車椅子で生活していらっしゃるそうです。
「葉子さんを教えていた頃がいちばん楽しかった」
N先生は本当に懐かしそうにそうおっしゃっていたわよ、と母。

花束をお送りしよう、と思いたちました。といってもN先生の現住所がわからないので、母を通していとこから東京の住所と電話番号を教えてもらい、インターネットで知ったLa Douceというお花屋さんに依頼しました。

ところが、花束を先生のお手元に届けていただくにはちょっとばかり長い紆余曲折があり、今もってなお、花束が実際に届くかどうかわからないというありさま。最初の難関は、La Douceを営むSさんという女性からメールで知らされました。

配達のお日にちのご確認のため、N様のお宅へお電話しているのですが、
常にご不在なのか、まったく電話にお出になりません。

今日、N様のお宅の近くで仕事がありましたので
ついでというのもいけませんが、
直接N様にお会いして、お届けのお日にちをお約束させていただく
つもりでお宅へお伺いしてみたところ
お知らせいただいているご住所にはN様がお住まいではありませんでした。


050617kawag1.jpg
そこには住んでいない?! 教わった住所が不正確なのか、引越しなさったのか。母を通して再びいとこに問い合わせてもらうと、母が書きとめた「104号室」ではなく、「102号室」であることが発覚しました。La DouceのSさんにそのむねメールを出すと、すぐに返信がありました。
早速お調べいただいてありがとうございます。
102号室だったのですね。
郵便受けにてN様のお名前を探してみたのですが
お名前を記していないお宅が多く、
見つけることが出来なかったのです。残念!
やれやれ、これで解決? でも、いつ電話しても出ないというのが気になります。おまけにいとこは、こんな気がかりなことも言っていたそうです。「そういえば、最後にN先生に手紙を出したとき、引っ越す予定があるという返信があった」と。

その後の難関はこんなふうに続きました。
(1) いとこから聞いたN先生の電話番号にかけてみたけれど、やっぱり応答がありません。
 ↓
(2) NTTの番号案内に尋ねてみたら、N・Tという名前では届け出がないと言われました。
 ↓
(3) でも、同じマンションに、別のNさんが住んでいるとも言われました。
 ↓
(4) 別のNさんに電話をしてみたものの、やっぱり人違い。
 ↓
(5) そのNさんが「うちのマンションの1階に、N・Tさんという夫婦が住んでいる。奥様が車椅子のご夫婦である」といい、住民名簿で電話番号を調べてくれました。
 ↓
(6) しかし、マンションの名簿上では、N・Tさんの電話の欄は空白になっていました。先生は固定電話をお持ちではないのかしら?
 ↓
(7) お花屋のSさんから、私がすでに支払ってあった花束代を「返却することも可能なので、ご遠慮なくお申し付けください」と優しいメールをいただきました。
 ↓
(8) こんな電報を打ってみました。

N先生、お元気でお過ごしですか? この時期はいつも発表会が開かれましたね。懐かしく思い出されます。川口葉子(旧姓○○、携帯電話:***-***)
 ↓
(9) 数日待ってみたけれど、特に連絡がこないので、見切り発車で花束を届けてもらうようSさんにお願いしました。
 ↓
(10) Sさんから、手厚いお届け体勢の詳細と、「何が何でも届けてみせる」という頼もしい返信をいただいて感激。N先生がお留守の場合はマンションの前で2~3時間、待機してくださって、それでもお目にかかれなかった場合は翌日も再配達してくださるというのです。「万が一、それでも届けられなかった場合はどういたしましょうか?」
 ↓
(11) こんな返信を出しました。
どうしてもお花が先生に届けられなかった場合は、
Sさんのお好きなかたに「天使からのプレゼント」として
さしあげていただけますでしょうか?
Sさんのお友達やご家族にプレゼントしてくださってもよし、
行きつけのお店にさしあげて飾っていただいてもよし、
せっかくの美しいお花、どなたかに楽しんでいただけたら幸いです。

なにしろ、そこまでして配達していただけるのですから、
たとえN先生にお届けできなくても「八方手をつくして、気がすんだ」
と思えるのです。

多大なご迷惑をおかけしてしまいますが、どうぞよろしくお願いします。
この物語の結末を楽しみにお待ちしています。

もちろんSさんはたくさんの注文を抱えていらっしゃるので、現在、「マンションの前で2~3時間待機」のできる日にちを検討してくださっているところ。最終的に花束がいったい誰の手元に届けられるのか、まだ、まったくわからないのでした。


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