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2006年03月25日(土曜日)

宇宙のひとしずく

060324kawag.jpgごくまれにですが、どうしてこんな写真が撮れたのだろうと自分でも不思議になる1枚が生まれることがあります。

3月、奈良の秋篠寺を訪れた午後のこと。細かな雨がひっそりと町全体を包みこみ、お寺の本堂も、境内に咲きほこる梅の花もやすらかに濡れそぼっていました。

人影のない美しい境内を、傘をさしてゆっくりゆっくり歩いているうち、松の枝に目が吸い寄せられました。緑色の松葉ひとつひとつの先端に雨粒がやどり、冴えた光を放っているのです。その一粒に目をこらすと、水滴の楓ハに世界が凝縮されて映っていました。わずか5ミリほどのしずくが、地球をまるごと含んで、しんと静まりかえっています。

透明な地球はやがて重たくふくらみ、松葉の先から滴り落ちました。あ、地球がひとつ消滅した、と思いました。けれども、となりの松葉にはもうひとつの地球があり、さらにとなりにも別の地球があり、視線を移動させれば松の木全体に無数の惑星が鈴なりになって、銀河さながらにみずみずしくきらめいているのです。

この5ミリの地球の輝きがとらえられますように。そう願いながらレンズを向けると、まさに地球がしたたり落ちようとする瞬間が写っていました。

いま眺めてみると、写真には充足感のようなものも映りこんでいるような気がします。レンズを向けているとき、私は松葉の先端の水滴を見つめるのに集中して、ほかのことはいっさい考えていませんでした。自分が誰かなんてことも、気がかりな考えごとも、濡れた爪先の冷たさも、何もかもが消え去って、ただひたすら息をこらして立ち続けていたのです。

そのときは気がつかなかったのですが、もしかしたら私の意識はなにか<大きなもの>と、つかのま一体になっていたのかもしれません。


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