花びらと雪の舞う、あの衣装だんすのこと
来年早々に本の出版を予定オています。文章も写真も私が担当することになっており、その本におさめる写真の最初の撮影を、新月の次の日に桜の花のもとでおこないました。
はじめての作業で緊張するうえに、撮影場所の使用許可は1時間だけ。制限時間のなかで力を出し切らなくてはなりません。気持ちの張りつめた1時間でしたが、信頼できる友人たちがアシスタントをつとめてくれたこともあり、最後まで集中力を切らさずに撮影を終えることができました。
その夕方、出産のために入院していた友人からメールが届きました。
「午後1時半、息子が誕生しました」
満開の桜を前に私が作業に集中していたちょうどそのとき、友人もまた全力で赤ちゃんのために苦痛と闘っていたのです。誕生したベビーは3500gを超えるビッグサイズ! 彼女の大好きな陸亀にちなんで(ちょっとユニーク…?)陸人くんと名づけられました。
まともに陸人くんの人生の役に立ちそうなことは教えてあげられそうもありませんが、私は気のいい魔女のおばさんの一人として、あの衣装だんすのことや、まぼろしの子どもたちが見え隠れするあのイギリスの屋敷のことなどを、ちらりと話してあげようと思います。
『ナルニア国ものがたり』の映画が始まってほどなく画面に現れる大きな衣装だんす。それは数々のすばらしい児童文学のなかでも、もっとも胸おどるイントロダクションのひとつです。重たげなたんすの扉を開けるスクリーンの中の幼いルーシーに、呼びかけずにはいられませんでした。
「その衣装だんすのこと、私もよく知っているんですよ! 子どもの頃に何百回入ったかわかりませんからね。行ってらっしゃい!」
いつの日か陸人くんのことも、そんなふうにあの衣装だんすに送り出してあげられたらいいなと思っています。








