新月の珈琲とポルボロンの呪文
札幌の美しいカフェ森彦のオーナーである市川草介さんが、東京青山のアパートの一室で「一日喫茶室」を開きました。市川さんがコクと香り豊かに焙煎した深煎りのコロンビアと浅煎りのモカが、限定15名のお客さまの目の前でネルドリップされ、白い器に入れてふるまわれます。
コーヒーのお供に札幌から持ち込まれたのが、森彦のスタッフがつくったお菓子、ポルボロンでした。ポルボロンはスペインの修道院で生まれた伝統菓子。クッキーのような見かけから、かりっとした食感を想像していると、舌の上で淡雪のように溶け去ることに驚かされます。ポルボ=粉、ロン=ほろりと崩れる。日本語の名前にするなら「ほろほろ粉」というところでしょうか。
「食べるときに『ポルボロン、ポルボロン、ポルボロン』と3回唱えると、願いごとがかなうと言われているそうです」
市川さんがそう説明してくれました。ちょうどこの日は新月。新月のときに願いごとをするとかないやすいという言い伝えもありますから、ポルボロンの呪文はふだんの2倍効きそうでした! ただちに口をついて出た切なる願いは、来月、沖縄でレンタカーを運転するときに、車体をどこにもこすりませんように。民家の塀をポルボロンのように崩してしまったりしませんように。そして、今書いている本が無事に完成しますように。








