揺れる水のある街角
子どものころ、デパートの屋上で金魚を眺めるのが好きでした。
空色の浅いプールでゆらゆらと泳いでいる、朱色や金色の金魚たち。その水にすこしだけ指を入れてみると、太陽にあたためられた水は眠たげにぬるく、昼寝の夢に入っていくときのような、すこし意識が遠のく感じが伝わってくるのでした。
我らは夢と同じ物質でできている。
(「テンペスト」より)
シェイクスピアの魔術師の言葉を、大人になってから、そのときの状態にあてはめてみたりします。
最近ではめったにデパートの屋上で金魚売り場をみかけることがなくなりました。熱帯魚売り場さえも少ないようです。
数少ない金魚の天国といえば、銀座松屋の屋上。帽子をかぶって小さな金魚プールの前に座りこむと、金魚のゆるやかな動きが水底に淡い光の波模様をつくるのがよく見えて、いつまでも見飽きません。
街角で出会う水の風景は、気持ちにも水分をたっぷり与えてくれるものですね。有楽町ャjービルの前には巨大な水槽が出現して、濃いブルーや黄色をした沖縄の魚たちが泳ぎ回っていました。
水槽の前に身をかがめたら、水面とガラス窓に映った空が重なって、まるで魚たちが高層ビルの上空を飛んでいるように見えました。南の島の魚たちには、東京の空の泳ぎ心地はどう感じられたでしょうか。








