1年の最後に
日本のコーヒー界に大きな足跡を残された方の訃報が、この年末に飛び込んできました。もはやその人と言葉を交わすことはできなくなってしまいましたが、ある種、神様的な存在だったその人が魂をかけて育てあげたコーヒーの味と香りの記憶は、薫陶を受けた人々によって永く受け継がれていくに違いありません。心よりご冥福をお祈りします。
今はなき表参道の美しいカフェで、その人が焙煎したコーヒーを、そうとは知らずにずっと飲んでいたのだということがわかったのは数年前のことでした。
私の初めての著作 『東京カフェマニア』 の最初の章に、社会人になりたての時代にこよなく愛したカフェの記憶に触れ、いまでは名前すら思い出せなくなっているけれど、表参道の路地裏でひっそりと蔦におおわれて佇んでいたカフェに足しげく通っていた、と書いたところ、それを知った方が当時のオーナーとのご縁をつないでくださったのです。
すでに消えてしまったカフェのオーナーに初めてお目にかかり、往年の日々の記憶をうかがうのは不思議な気持ちがするものです。
「いつもお店のコーヒーを美味しく飲んでいました」
そう申し上げたとき、オーナーの口をついて出たのが、彼の名前でした。彼の焙煎した豆を用いるだけではなく、直接カフェに招いて丁寧にドリップの指導もしていただいたのだといいます。
人生の何年間かを、その人が焙煎したコーヒーの深く豊かな味わいとともに過ごすことができたのは、私にとって誇るべき幸運でした。クリスマスイブにこの世界から去っていかれたというその人に、そっと静かに、心からの感謝を捧げたいと思います。
今年もほんわか茶飲み日誌に1年間おつきあいいただきましてありがとうございました。2007年の私のお当番は1月11日(金)からのスタートです。新しい年もどうぞよろしくお願い申し上げます。








