おばあちゃんの距離
電車の中でよく感じることですが、若い女の子ほど、身体が他のひとと触れあうのをいやがりますよね。
私も若い時分には、見知らぬ誰かとほんのちょっと肘が当たるのも避けるほどでしたから、もしかしたら本箔Iなものでしょうか。
年齢を重ねた女性ほど、身体的距離が近いのを気にしないように思えます。電車の座席に腰かけていて、両腕がべったりと両隣のひとにくっついても意に介さないふう。
それは彼女の腕がたくさんの日々、たくさんの子供たちを抱きあげ、頬ずりし、そのよだれや涙やおしっこをきれいに始末してきたために接触に無頓着になったのかもしれません。
おばあちゃんの距離感で思い出すこと。もう署粕N前のことになりますが、私は電車が行ってしまったばかりの小さな駅のホームでベンチに座り、ピアスをつけようとしていました。
耳たぶに穴を開けて間もないころで、まだピアスの着脱に慣れていませんでしたから、ひどく時間がかかっていました。
ベンチの前にやってきて、私の隣に腰かけた小柄なおばあちゃん。興味しんしんで私の手つきを見つめているのがわかります。
ああ、そんなに凝視されたら、ますますピアスが入らなくなる……と、内心ひそかにあせっておりますと、なんとおばあちゃんはいきなりベンチの上に正座して、ぐるりと膝を回し、私に直角に向き直りました。
距離が近いです。しかも直角です。
「痛くないの?」
おばあちゃんは好奇心もあらわに尋ねてきました。いえ、大丈夫なんですよ、と答えましたが、私はもうふきだす寸前。
「大変だねえ! やっぱり痛いだろう!」
やっとのことで両耳にピアスが装着されるのをとっくり鑑賞してから、彼女は率直に感想を述べ、正面に向き直りました。
私もこんなおばあちゃんになるんだ、と心に決めました。見たいものは見たい、話しかけたかったら話しかける。それくらい自由になれてこそ、長生きの甲斐があるというものです。








