走る音楽
お昼の番組でタモリ氏が、ドライブしているときに音楽と風景がぴたりとはまったときの新鮮な感動に触れ、「夜の首都高にはワーグナーが合うんですよね」と述べていました。これには共感する人が多いのではないでしょうか。
しかし、もうひとつタモリ氏が挙げた例は、私にはわかりにくいものでした。
「夏に軽井沢のほうを車で走るとき、鬼押出しに向かっていくあたりは、意外なことにクリスマスソングが合うんです。真夏に、古いクリスマスソングっていうのがね」
これは実際に走って体験してみないとぴんとこないようです。
映画のBGMには古典的な“真逆の法則”というものがあり、恐ろしい光景に無邪気で単純な童謡をもってくるといっそう不気味な効果を上げたり、恋人どうしが幸福そうに街角を歩いていく光景に哀感を帯びたメロディーを合わせると、その幸福のはかない美しさが際だったりすることがありますので、「真夏の高原とクリスマスソング」もその組み合わせなのかもしれませんね。
余談ですが、ワーグナーが戦闘音楽としても危険な魅力をはらんでいることは周知の通り。フランシス・コッポラの『地獄の黙示録』の名物シーンといえば、ワルキューレを大音量で流しながらヘリコプター部隊が空爆を繰り返す光景。人間の感情を高揚させる音楽は、どこかデモーニッシュな要素を含んでいるようです。








