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2008年10月24日(金曜日)

谷中の散歩、珈琲花歩

081024kawag1.jpgたまに通っている西日暮里の整体マッサージがある界隈は、大通りから一本細道に入れば、すぐに昔ながらの静かな住宅街に迷いこむようになっています。大小のお寺と墓地が密集する小路を、清潔な午前の光にお線香の匂いが遠く近く混じってくるのを嗅ぎながら散歩するのは、この季節はとくに気持ちがいいもの。

そんなのどかな一角に、「花歩」という白い暖簾を下げた、古びた一軒家が佇んでいます。
「珈琲」の文字につられて暖簾をくぐると、かつてたしかに日々の暮らしがおこなわれていたことがうかがえる間取りに、お客さまを迎えるためのテーブルが居心地よくしつらえられ、すだれごしに庭の緑が柔らかく輝いていました。

平日の午前だったせいでしょうか、先客は、2つある部屋の一方に青年がひとりだけ。庭を眺めて珈琲を飲みながら、腕時計の秒針の音さえ聞こえてきそうな、しんとした時間を楽しんでいるようです。彼のじゃまをしないように、もうひとつの部屋で珈琲をいただきました。

壁に飾られているのはレコード盤や、みやびな色彩の裂布細工、刺繍の木枠たち。時計の下には「自由に歩くのでご注意下さい」と貼り紙がありました。たしかに、針はグリニッジ標準時を無視して気ままに散歩しているようです。

081024kawag2.jpg素敵な風情の女主人に尋ねてみると、彼女は築50年を越えたこの家屋の2階に住んでいらっしゃるそう。以前、雑誌にお店が掲載されたら、しばらくのあいだ一気に混雑するようになってしまって、満席でお入りいただけなくなったのがしのびなくて……とのこと。ご迷惑をおかけしないよう、この小さなエッセイの場で取り上げさせていただくことにしました。

コーヒーはコクテール堂の豆を使って、ていねいに1杯ずつ淹れられます。あわせて注文した紅玉りんご入りのしっとりケーキも、オーダーを受けてから生クリームを泡立てるなど、本当に一から支度をしてくださるので、運ばれてくるまでに少し時間がかかります。
そのあいだに、窓辺の蚊遣りから白い煙がたなびいて、さしこむ日射しの中でさまざまなかたちに渦巻くのをじっと眺めて楽しみました。

谷中の散歩の途中で花歩に立ち寄るときは、小さな古い家に流れている時間に呼吸を合わせられるよう、どうぞおひとりで、心楽しく。

珈琲花歩(コーヒーかぽ)
東京都台東区谷中3-21-8
TEL 03-3821-5642
OPEN 10:30~18:00
CLOSE 土日祝


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