エシレ、貧者のケーキ
用事ついでに、閉店時間まぎわに立ち寄った「バターの館」こと丸の内のエシレ・メゾン デュヴール。
先日クロワッサン購入にチャレンジした友人によれば、「さすがに大行列のほとぼりは冷めてきた」とのことで、私が訪れた夕方も店内にお客さまの姿はなかったのですが、もちろん話題のクロワッサンはきれいに消滅していて、フィナンシェなどの小さな焼き菓子とケーキがあるのみ。「ミゼラブル」を購入しました。
常温に戻してバタークリームが柔らかくなってから食べるとおいしいですよ、というコメントつきのミゼラブル。エシレバター50%という贅沢なバタークリームと、しっとりしたダクワースを交互に重ねたシンプルなケーキです。
濃厚なバター感は「マルセイのバターサンドに通じるものが…」と、いっしょに食べた夫。しかし、ミゼラブルは重たいのに上品。よけいな甘みや塩気がなく、後味にくどさがありません。
ただ、バター好きの私でさえもこの量はトゥーマッチ。半分の大きさなら「あとひとくち食べたいな」という最高の状態で食べ終えられたのではないでしょうか。
何よりも気になったのは、ミゼラブルというネーミング。なぜ、おいしいお菓子に“みじめ”などという名前が?!
購入するときにお店の人に質問せずにはいられませんでした。(アルバイトのかただったのでしょうか、わざわざ他のスタッフに聞きに行ってくれました。ありがとう)
「昔は牛乳がなくて、水で作られていたんだそうです」
なるほど、この場合のミゼラブルは反語的に使われているのですね。
私が小学生のころ、図書室に並んでいた『レ・ミゼラブル』には『ああ無情』というクラシックな邦題がついていました。たった1本のパンを盗んだ罪で、20年近くも刑務所で暮らさなければならなかったジャン・ヴァルジャン。
もしも私が盗みの現場に居合わせたなら、ジャン・ヴァルジャンを追いかけていって、そのパンに上等のエシレバターを塗ってあげたかったと思うのです。
だって、彼が出獄したあとに使った偽名は「マドレーヌ」。バターが好きだったに決まっています!








