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2010年03月19日(金曜日)

はずれも味わいのうち

100319kawag.jpg原宿で10年間親しまれてきたカフェ、BLISS(ブリス)が中目黒に移転しました。

BLISSは日本初のトラベルカフェ。店主の古閑さんは自分が世界中を旅した経験をもとに小さな旅行代理店を開き、あわせて、旅をしたい人、旅から帰ってきた人が情報交換のできる場所としてのカフェを設けたのです。店内には旅に関する本が多数並んでいて、貸し出しも可能。

  ▼TRAVEL CAFE BLISS(トラベルカフェ・ブリス)
  東京都目黒区青葉台1-17-2
  Tel 03-6416-1178
  Open 12:00~24:00、火休

なぜ、移転したのですかと訊ねてみたら、大きな節目の年を迎えてBLISSもまた新しい旅に出たかったし、この10年の間に人々の旅のしかたが全く変わってしまったといいます。

いまや、インターネットで検索すれば世界各国への旅行が予習できてしまう時代。実際に旅をしてきた人にわざわざ会って体験談を聞かなくても、パソコンの前に座ったまま、くまなく調べあげることができるのですよね。

もちろんそれは便利でありがたいことだけれど、旅する人の根底にあったはずもの--「旅ごころ」のようなものが消滅してしまった、と古閑さんは指摘します。

あらかじめどんな風景や食べものがあって、どんなトラブルが起きやすくて、という他人の情報で頭をいっぱいにして出かけると、なにを見ても予習済みのものばかりでドキドキしないんですよね。単に予習したものの確認をしているだけのような、心の振り幅の少ない旅。

なかには、旅に出なくても、もうその土地のことがすっかりわかったような気になってしまうこともあるでしょう。東京のカフェの情報も同じことです。これは私が自分の仕事として最も頭を悩ませる部分でもあります。

インターネット上で「あのカフェはまだ行ったことがないのですが、行った人どうでしたか?」と、度を越して確認したがる人を見かけることがあります。
そんなに時間をかけてみんなに聞いてまわるより、自分で行ったほうが早いし正確なのに、と不思議に思います。

たとえそのカフェがはずれだったとしても、東京では500円のコーヒー代と30分の時間を失うだけで、命の危険にさらされたりはしないのですから。お店を出たあとで「はずれだったよ」と笑って友人に報告して終わりにすればいいと思うのです。

無愛想なスタッフに、大きな固い音をたててテーブルにお水のグラスを置かれたおかげで、それまで普通だと思っていた行きつけのカフェのスタッフが、ちゃんと気をつけてグラスを置いてくれていたんだな…ということに気づけたりします。

でも、そんなはずれの体験を笑って終わりにしない人も、この10年で増えたように思います。10年の間に、人々がクレーマーに変貌してしまったようだと古閑さんは語ります。

「気持ちに余裕がなくて、イライラしている人が多くなったんでしょうね」

小さな欠点やミスにぶつかったら、相手に直接おだやかに伝えるか、もしくは笑って忘れるという選択肢を選ぶことが、私自身は精神衛生にとっても最も好ましいような気がします。

「みんなの旅ごころを取り戻していけるのかどうか、そんなことを新しいBLISSで模索しようと思っています」と古閑さん。
BLISSが旅行代理店であることを知らずに来店しているお客さまも多いのですが、それでOKなのですって。この日もスーツ姿の男女4人グループがテーブルを囲んでのんびりとミーティングをしていました。

「旅も、カフェも、自由になるためのツール」

かつてSHOZO CAFEを取材させていただいたとき、オーナーの省三さんはそう話してくれました。私も全く同じ意見。どんな時代になっても、そうでありますように。


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