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2010年08月28日(土曜日)

Fructus(フラクタス)の新鮮オーガニック・スムージー

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100828kawag.jpg千駄ヶ谷に用事があり、GOOD MORNING CAFEで遅いランチをとろうと日傘をさして歩いていたら、すぐ手前に小さなカフェを発見。なんでも小さなものに目がとまる習性ゆえ、入ってみました。

そこはFructus(フラクタス)という新鮮なフルーツと野菜たっぷりのオーガニック・ジュースのお店。黒板には「食事代わりに」というコメントが踊り、ブルーベリースムージー、梅スカッシュ、などのメニューが並んでいます。

ちょうどその日、私は南房総の海での3日間のベジタブル&フルーツ・デトックス合宿(?)から帰ってきたばかり。じっくりと黒板を眺め、ブルーベリースムージーに使われる素材をチェックしました。(きちんと書いてあるのがありがたいですよね)

●ブルーベリー
●バナナ
●レモン果汁
●豆乳
●アガベシロップ

最初の3つは理想的。アガベシロップも、甘みづけに使う材料としては最良の選択です。(うちでも愛用中)

気になるのは豆乳。99%のベジタリアンには歓迎される素材ですが、大豆イソフラボン摂取を控えめにしたい私にとっては、なるべく避けたいもののひとつです。

「ブルーベリースムージーの豆乳抜き、できますか?」
「それだと、ジューサーが回らないですね」

カウンターの中に立っていた男性が、にこやかに答えてくれました。そりゃそうです。結局「豆乳少なめ、アガベシロップ抜き」でお願いして小さなスムージーを作ってもらいました。

これがおいしくて、バナナの自然な甘みがほんのり。わずかにねっとりした感触は、豆乳が少ないためにバナナ比が増え、全体が濃厚になっているせいですね。それもまた好みです。
大きなサイズを注文すれば、1本で充分に栄養補給とデトックスのできるランチになりそう。

聞けば、土曜日には神奈川で無農薬栽培された野菜の販売もあるのだそうです。朝いちばんに収穫したものを届けてもらうのだそう。

この夏、朝どりのトウモロコシをOisixで取り寄せてナマでかじり、予想外の甘くフレッシュなおいしさに感動したので、「その朝とれたばかり」の威力はよくわかります。

いいですよね、こんなコンセプトのお店。どの駅のそばにも1軒は欲しいくらい。
だって、本当に自分が望む素材だけをたっぷり使って作られたお料理って、外出先ではなかなか食べられないのですから。ジュースやスムージーならば、お料理より気軽に提供してもらえそうです。

(で、そのあとGOOR MORNING CAFEで野菜ランチをいただきました‥‥こういうことをやめられれば、ダイエットできるのですが)

 Fructus(フラクタス)
 東京都渋谷区千駄ヶ谷1-20-3
 【Tel】03-6447-0080
 【Open】9:00~17:00、日9:00~17:00、月休

※天然酵母のパンやフルーツサンドもありました。

※毎週火曜日には、NYでビーガン料理を学んでいた人が作るマフィンが登場するそう。動物性食品不使用。


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2010年08月21日(土曜日)

叱ってくれる人

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100821kawag.jpg長い歴史を歩んできた珈琲店には、いつのまにか伝説ができあがっているものです。はたして事実なのかどうか、伝説の多くは、そのお店の周辺にいた人々が勝手に作りあげてしまったものなのかもしれないけれど。

「むかし、*珈琲店のカウンターはすごかったんだよ。お店もすごいけど、客もすごい人が多くてね」

これは古くからの珈琲ファンが時おり語る伝説です。

「珈琲の飲みかたを知らない奴は、お店の人からビシビシ注意されたし、マナーをわきまえない奴がいると、客が客を叱ったからね。だから僕なんか最初の頃は、おそれ多くてカウンターには座れなかったね」

そんな厳しいカウンター席には、私も怖くて座れそうもありません。でもきっとテーブル席で黙って珈琲を飲みながら、カウンターのやりとりに耳を澄ませて、たくさんの貴重なもの、他では決して知ることのできないものを学んだことでしょう。

近年では、お客さまは神さまになってしまったので、礼儀をわきまえない人を誰かが叱るという光景にはめったに出会わなくなりました。

家族でも友人でもない、その場に居合わせただけの他人に対して、相手の非をさとし、なにかをきちんと伝えるには、とてつもないエネルギーと真剣さが必要です。

ちゃんと叱ってもらえた人は幸せなのです。相手が本気で何かを伝えようとして時間を費やし、大変な努力を払ってくれたことに対して、そして大切なことを気づかせてくれたことに対して、あとから感謝の気持ちが湧いてくるかもしれません。

もし時が戻るのなら、往年の*珈琲店のカウンターに座って、一度はがっちり叱られてみたい。

そんなことを思うせいでしょうか、最近、それは少し違うのではないかしらと感じた誰かの言葉に対して、「私には違和感があります」と率直に言うことが増えてきました。

もしかしたらいずれ「意地悪ばあさん」と呼ばれる日が来るのかもしれません(笑)

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2010年08月14日(土曜日)

1945-1998 by Isao Hashimoto

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100814kawag.jpg   (写真上)露天風呂から眺める夏空。
   (写真下)岡倉天心が茨城・五浦海岸に建てた六角堂


2泊3日で北茨城へ温泉旅行をしました。そのおかげで、NHKが深夜に放送していた戦争の証言番組に熱中するはめに。

子どものころ、年長者が語る戦争体験を聞くのは苦痛でした。理不尽でつらい体験を聞くのが、怖い‥‥というよりは、正直なところ退屈で。

小学生の想像力は、楽しい方面にはどんどん広がるのに、大きな社会的悲惨さの方面には広がらないものなのかしら。
骨折の痛さとか、幽霊なんてものを、いきいきと想像しすぎて怖くなるのは得意だったのだけれど。

けれどもこの1週間ほどは、夜ごと放送される「戦争証言プロジェクト」を、本当に食い入るように見てしまいました。
番組の送り手のほうも、力がこもっていたように思います。

きっかけといえば、旅行中は昼間のんびり露天風呂につかって、ふだんの生活ではありえないほど早い時間帯にご馳走を食べて大酒を飲むものですから、夜9時にはもう旅館の布団で熟睡。

その結果、深夜1時ごろにすっきりと目覚めてしまうのです。そして何気なくつけたテレビの画面にひきこまれていきました。
終戦から65年。「戦争を知らない子ども」も、いまや65歳になったのですね。

そんな1週間の象徴ともいうべき映像作品。
1945-1998 by Isao Hashimoto

私はこの作品を坂本龍一のtwitterで知りました。制作者の橋本公氏は、現在、箱根ラリック美術館のキュレーターをなさっているとか。

(この作品じたいに説明は必要ないと思いますが、橋本公さんのコメントを紹介しているブログをみつけました)

ただ、慄然とします。坂本龍一がつぶやいたように、私たちは全員が否応なく死の灰を吸いながら生きているのです。まだご覧になっていないかたは最後までじっくりとどうぞ。15分ほどの作品です。

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2010年08月07日(土曜日)

カフエマメヒコの名作カレーパイ!

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100807kawag.jpgカフエマメヒコのオーナー、井川さんに昨年お話をうかがったとき、北海道に土地を借りて自分たちで豆をつくるという素晴らしくて無謀な計画をちらりと話してくださったのですが、なんと本当に実現してしまわれました。

東京のマメヒコから、農業などしたこともない美女スタッフ2名が北海道へ。小屋に住み込んで豆づくりに汗水たらしているそうです。いやはや、よくそんな勇気ある行動が!
チャレンジしているのは無農薬栽培。ブログによれば、周囲からは「勇気栽培」と言われているもよう。

先日、渋谷のカフエマメヒコでマメレット(お豆のガレット)を楽しんだ帰りに、ガラスケースの中のパイ2種をテイクアウトしました。

その日並んでいたのは、自分たちで丁寧にあんを炊いて作る小豆パイと、「マメヒコでは珍しいんですよ」というカレーパイ。
きちんと甘みを感じさせながらもしつこくない小豆パイはもちろん美味でしたが、カレーパイにはさらなる感動がありました。

ひとくち食べて、思わず断面をしげしげと眺めてしまう絶妙の味わい。はっとするような新鮮さと懐かしさ、嬉しさがぎゅっと詰まった名作です。
こっくりと濃厚なカレーの中に、きれいな形の豆がひと粒、顔をのぞかせていました。そのカレーとパイ生地の相性の良さ! 間違いなく私の「自己ベスト」カレーパイです。

お店を出るときにスタッフが、マメヒコのお料理とデザートを考案している滝口博子さんを紹介してくださいました。

60代の滝口さんの肩書きは「主婦」。大切な家族のために作る家庭料理の秀逸さが評判となり、周囲の人々に請われるかたちでお料理教室を開くようになって十年以上。

マメヒコのオーナー井川さんは、かつてはどこにでもあったはずの手をかけた家庭料理の良さをマメヒコのお手本にしたいと願って、メニューの考案を滝口さんに依頼したようです。

マメヒコの店頭に置いてある冊子「ヒトヒコ」の滝口博子さんの回(2008年vol.5)は、マメヒコの楽しい企画の舞台裏をのぞきたい人にとって格好の読みものであると同時に、カフェを始めたいと思っている人にとっても最高の参考書。
※冊子にはWebに掲載された内容の長い続編(ここからが本番)が綴られており、数倍ものボリュームになっています。
 
2週間のあいだカフェで朝食を出すという企画「アサヒコ」が、どのようにしてわくわくと膨らみ、その後、二転三転…どころか何回転もして、試行錯誤が繰り返されたか。実現にあたって、具体的にどんな種類のハードルが現れるのか。最終的に何を大切にしたか。お客さまに何を届けたかったのか。

失われた「旧き善き日本の朝食」をカフェのテーブルに出現させる道のりを読むと、こんなこと、ちょっとやそっとの決意やエネルギーではとうてい真似ができないということがよくわかるのです。

この夏、渋谷には3軒目のマメヒコが誕生するそう。スタッフの方々には、やや不思議な新しい挑戦(だって、トンカツと珈琲と食パンをテーマにしたお店なんだそうですよ)に取りくむときの、きらきらするような活気が感じられました。

男子がアイスコーヒーをテイクアウトするためにお店に入ってくる光景も見かけて、マメヒコの姿勢が、全員ではないのかもしれませんが、お客さまにしっかりと伝わっているのだな、と頼もしく思いました。

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2010年07月30日(金曜日)

カフェ・ド・ロペの復活:葉山Cafe de Rope La Mer

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100730kawag1.jpg新刊『東京カフェを旅する~街と時間をめぐる57の散歩』(文と写真=川口葉子/平凡社/1500円+税)が発売になりました。書店でみかけたらぜひお手にとってくださいね。
本の内容はこちらでご紹介しています。

本書では東京の魅力的なカフェ57軒をご紹介するとともに、1960年代から2010年にいたるカフェの歴史を綴り、1972年に表参道に誕生したオープンカフェの先駆的存在「Cafe de Rope」(カフェ・ド・ロペ)についても取り上げました。

その伝説のカフェが昨年に引きつづき、今年の夏も葉山にビーチハウスとして復活しています。

Cafe de Rope La Mer(カフェドロペ・ラ・メール)
【address】神奈川県三浦郡葉山町 一色海岸
【open】11:00~21:00 、土日祝11:00 ~22:30

※本でも触れたことですが、かつてCafe de Ropeがあった場所には、現在、山本宇一さんが手がけたカフェラウンジmontoak(モントーク)が建っています。どちらも経営はアパレルブランドJUN。

先週、あまり陽射しの強くない日を選んで(‥‥のはずが、葉山についたらみごとな晴天)、一色海岸界隈でのんびりと一日を過ごしました。

100730kawag2.jpg昔ながらの海の家が並ぶ一色海岸において、先端のとがった優雅な白いテントを持つCafe de Rope La Merは少しだけ異色な存在。デッキチェアは美男美女で満席! 夕方が近づくにつれ、海からあがってDJブースの前で踊る人々が増えていきました。

都心の人気カフェが海辺に夏だけの期間限定で海の家を出店する例としては、私の知る限りでは2004年に江ノ島海岸にオープンしたBEACH HOUSE eau cafe(ビーチハウス・オゥカフェ)が先駆け。

eau cafeが白い砂浜の上にゆったりしたソファまである本格的な【部屋カフェ】をつくりあげたのに対して、Cafe de Ropeは完全に海の家。
お料理についても、eau cafeではカフェのシェフがパスタやメインディッシュに腕をふるっていましたが、Cafe de Ropeは他店とのコラボレーションのようです。でも、そんなことはこの際どうでもよくて。

サングラスをかけていてもまぶしい青空。きらめく光の粒に満たされた海。潮風。それから、焼けた鉄板の上を歩いているような熱い砂の感触。子どもたちの笑い声。泳ぎすぎてすっかりだるくなってしまった体を横たえて眠るカップル。

なんだか遠くて懐かしい、7月の海の過ごしかた。

私たちといえば、そういう最前線はもう若い人々におまかせして(ちょっとした引退気分を感じました(笑)、ひたすら日陰で冷たいウォッカトニックを飲みながら、水平線の輝きに目を細めて至福の時間を過ごしました。

伊豆大島の海を「自分ちの海」だと思っている夫と私にとって、葉山あたりは「よそのお宅の海」に感じられるのが面白いのです。でも、太陽が傾いてきて、頬に受ける風の温度が急に涼しくなるのに気づいた瞬間の強烈な快感などは、どの海でも変わりません。

ひとりで身軽な格好で現れ、海を眺めつつ淡々とブラッディマリーを楽しんでいく地元民らしいおじさんもいました。もちろん足もとは葉山の公式サンダル=げんべいのビーサン。
海辺では、リラックス上手な人ほど素敵に見えるものですね。

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2010年07月17日(土曜日)

デルベア・頑固もののバウムクーヘン

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100717kawag.jpg女性の珈琲焙煎家の先駆けであるグラウベルの狩野さんから「デルベアの会」と題した集まりのお誘いをいただいて、お宅におじゃましました。

会の趣旨は、奈良で熊倉真次さんがこつこつと一人で作り続けるデルベアのバウムクーヘンに合うコーヒーをテイスティングすること。

当日集まったのはカフェのオーナーなど、コーヒーの仕事にたずさわる人々8名。予約してから1~2ヶ月待ち、という貴重なデルベアのバウムクーヘンを食べながら、狩野さんが焙煎した6種類のコーヒーをすすり、どの銘柄が最もバウムクーヘンの魅力をひきたてるかに思いをめぐらせました。

おもしろいことに、人によって選んだ銘柄がかなり違うのです。私はワインで覚えた「ワインの要素とお料理の要素に、共通点を持たせる」という基本法則を採用していますから、まずは

☆フルーツの酸味が魅力のお菓子=フルーツの酸味を持つコーヒー
☆ナッツをちりばめたお菓子=ナッツの香りがあるコーヒ-
☆バターが魅力のお菓子=しっかりした苦みとコクのあるコーヒー

という大原則をあてはめてみました。
そうすると、直球の正解はバウムクーヘンのバターに合わせた、深煎り・苦味系の濃く抽出したコーヒー。

ところが、デルベアのバウムクーヘンはカルピス発酵バターを贅沢に使っているので、バターの力強さのなかに、ほんのりと発酵特有のおいしい酸味が混じっているのです。
バニラも、すぐに鼻にぷんとおしよせる人工香料ではなくて、ほのかなアニスの香りをまとった本物のバニラの柔らかな香り。

この繊細な美しさを大切にしたいなと思ったら、あまりストロングなコーヒーよりも、いやみのない酸を持つ、バランスのとれた銘柄のほうがふさわしいと思えてきました。かといって、あっさり、すっきり系のコーヒーではバターの重厚感に負けてしまって物足りないのです。

そして、他の参加者の方々のコメントを聞いていて気がついたのですが、このバウムクーヘンの魅力をどうとらえるかによって、強調したい要素がまるで違ってくるので、合わせたいコーヒーにもばらつきが生まれるのですね。興味深い発見でした。

狩野さんはオカズデザインさんが取りもつご縁でデルベアと出会われたそうで、この日はオカズデザインさんがいらして、熊倉さんがバウムクーヘンをどのように作っているかを話してくださいました。

自然素材を選び抜いて、それはもう、たった一人であきれるばかりの頑固で真っ正直な手づくり。
膨張剤などの添加物を加えて膨らませることはせず、あの何十にも重ねられる層をじっくりと一層ずつ焼き上げていくそうで、どんなにがんばっても1日に2本しか完成しないとのこと。

勇気。それなくして、こんなものづくりはできないですよね。妥協しない頑固さから生まれたシンプルなおいしさは、食べた人にも小さな勇気を与えてくれます。

そして私は「バウムクーヘンをコーヒーにひたして食べる」という新しいおいしさに夢中! デルベアのバウムクーヘンだからこそ可能な楽しみ方だと思います。

ちなみにオカズデザインさんは、今秋から始まるNHKの連続テレビ小説(あらためて考えると趣深いネーミング)で<おばあちゃんのごはん>づくりを担当されるそう。思わず「エキストラで出演してそのごはんを食べたい」と漏らして、すかさず「テレビに出るのは嫌いだったんじゃ?!」とつっこまれました(笑)

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2010年07月09日(金曜日)

アテネのカフェで、朝パフェするビジネスマン

東京カフェマニア主宰 川口葉子

ミコノス島~アテネ~ドバイと、9日間の旅に出かけてまいりました。
古代文明の厚い歴史が横たわるギリシャ。現代に急激な発展をとげたアラブ首長国連邦。その対比がくっきりと際立つ旅となりました。

ドバイはまるで砂漠に建つ巨大なディズニーランド。この都市にはリーマンショックでバブルが崩壊するまで、世界中のお金が豊富に流れこんでいたので、人工的に造られたものたちが馬鹿げて壮大で絢爛豪華なのです。

「世界一」が大好きなドバイ。世界最高ランクの“七つ星”ホテル(全室スイートルーム、アメニティグッズはエルメス!)、世界最大のショッピングモール、中東最大の人工屋内スキー場…。

それらが気温40度を軽く超える都市に林立する光景は、まさに砂上の楼閣。都市のすみずみまで毛細血管のように張りめぐらされた水道設備が止まれば、一瞬にして何もない砂漠に戻りそうな、奇妙な居心地の悪さ。

ドバイの街の不自然さは、雨と湿度の国に住んでいる私が本能的に感じてしまうもので、もしドバイで生まれ育った人が東京観光をしたら、こんなに雨ばかり降っているじめじめした街なんて住めやしない、と思うかもしれませんね。

100709kawag.jpgいっぽうのギリシャは、最近になって財政危機のニュースが大きく報じられたばかりですが、さもありなんという優雅な無駄っぷり。ギリシャ人には「人件費の削減」という概念があまりないようで、美術館も伝統的なタベルナもあきれるほどスタッフが多いのです。

そして美術館のスタッフが展示室でどんな仕事をしているかといえば、すみの椅子に腰かけて、携帯電話でおしゃべりに夢中なのでした。なんておおらかで楽しい国なんでしょう。

ありがたいことに、ミコノス島もアテネも街じゅうカフェだらけでした。陽射しが強烈なので、みんなが水分と日陰を求めるのですね。

写真はアテネの繁華街、シンタグマ広場近くにあるカフェ。高級ブランドショップが並ぶ通りにある洗練されたカフェで、奥にはレストランが併設されていました。

携帯電話でお話し中のビジネスマンの前には、パフェとカプチーノ・フレド。この冷たいカプチーノはアテネでもミコノスでも大人気のドリンクで、みんなこぞって注文していました。

ちなみに、時刻は朝の9時。ヨーロッパの男性の多くはスイーツ好きなのですよね。人目を気にせず朝からパフェが楽しめるのは、まだ少数派の日本のスイーツ男子にとってはうらやましい環境に違いありません。

ショーケースには繊細で美しい造形のケーキの数々。そしてここは、私が飲んだなかでは一番エスプレッソがおいしいお店でもありました。

しかし胸が痛むことに、この素敵なカフェも2月の財政危機にまつわる最大のストライキ&デモ行進の際に、テラス席に並ぶ大理石のテーブルが破壊されたもよう。先ほどそれに言及した写真入りブログをみつけました。

私が見た限りでは、カフェに暴動の痕跡はかけらほども残っておらず、エレガントで穏やかな時間が流れていたのですが、ギリシャ政府がむやみに多い公務員とその給与の削減に手をつけて、財政の立て直しを本格的にわかりやすいかたちで始めないと、ビジネスマンが心ゆくまで朝パフェを楽しめる場所が再び損なわれてしまいそうです。

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2010年06月25日(金曜日)

キャラメル・マッドスライドと路地裏の珈琲店

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100625kawag.jpg渋谷のSTREAMER COFFEE COMPANY(ストリーマー・コーヒー・カンパニー)といえば、以前の記事でもご紹介した、世界フリーポア・ラテアート・チャンピオンシップの優勝者、澤田洋史さんがオープンした旬のエスプレッソバー。

最初は見事なラテアート以外は目に入らなかったのですが、注意深く眺めていたら、他にも気になるドリンクをいくつか発見しました。その中のひとつが「キャラメル・マッドスライド」。

マッド=MADかと思ったら、泥を意味するMUD。

澤田さんによれば、「キャラメルをエスプレッソで溶かしたものを、ミルクと合わせたものです。MUDSLIDE=『ドロが滑り落ちる』。ミルクの上にキャラメル&エスプレッソのドロ状(リッチな味わいのキャラメルソース)の液体を流し入れます」

キャラメルはコーヒー系の風味と相性がいいですよね。暑いけれど風がスパークリングウォーターのように心地よかった昨日の午後、再びSTREAMER COFFEE COMPANYを訪れて、さっそくキャラメル・マッドスライドを注文。(写真上)

キャラメルの優しさとエスプレッソの力強さが融合し、ほんのり甘いのだけれど嫌みな後味がなく、すっきりと楽しめました。夏の疲れを癒す冷たい一杯としてふさわしく思われます。

STREAMER COFFEE COMPANYで働くバリスタたちは、カナダやニューヨークの有名カフェで活躍した経験のある男子が多く、最新のエスプレッソ・シーンの風を感じさせてくれるのが大きな魅力。

いっぽうで東京には、日本の偉大な珈琲人たちがきわめてきた珈琲の世界も、決して華やかな話題にはならないまでも、豊かに息づいています。

先日訪れた路地裏の小さな古い珈琲店で、棚の上に、亡き高名な焙煎人の名前を貼ったガラス瓶をみつけました。小さなガラス瓶の中には珈琲豆。2007年末に亡くなったその人の焙煎した豆が、遺品のようにして大切に保存されていました。

思わず「匂いをかいでもいいですか」とお店の主人に尋ねたら、「匂いは良くないの。(なにしろ焙煎して2年半以上が経過していますからね)でも、豆が強くて、生きている」

焙煎しているときに、ほんの数回だけれど神を見た……と語った亡き人の、想いと技術の強靱さの片鱗に触れたような気がしました。

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2010年06月12日(土曜日)

アルトゥール&サブリナ 『バラとひまわり 』 A Rosa e o Girassol

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100612kawag1.jpg『バラとひまわり』
Arthur & Sabrina

2010年6月4日発売
Rambling Records
ジャケット=福田利之

100612kawag2.jpgせつない胸のうちをそっとつぶやくような歌とアコースティックギターの響き。耳に残るアルトゥールのあたたかで誠実な声、サブリナの花のように可憐な声。

日本在住のブラジリアン男女のデュオ、アルトゥール&サブリナのデビューアルバム『バラとひまわり』発売を記念して、ブラジル大使館で気持ちのよいライブがおこなわれました。

司会進行の日本語担当は、このCDをプロデュースした鎌倉のカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュのマスター、堀内隆志さん。本当に素敵な曲をつくるアルトゥールたちを応援したいという気持ちから、初のプロデューサー役を担当されたのだそうです。

※アルバムの内容とレコーディング風景が、堀内さんのブログで紹介されています。

才能溢れるアルトゥールはなんと弱冠20歳! ライブが始まる前に、ブラジル大使館の階段でたまたま彼とすれちがったのですが、柔らかい笑顔から、チャーミングな人柄が伝わってくるようでした。

深煎りのコーヒーを淹れて、いつまでも聴いていたくなるような音楽。夏休みに伊豆大島の実家でパワープレイ(?)することに決めました。

『バラとひまわり』はこちらで視聴できます。名曲「Edo」(江戸)の微笑ましいPVもぜひ! 「銀座線なのか…渋谷なのか、浅草に行くのか…」と歌われるこの歌、メトロのテーマソングとしても最高なのです。

歌詞がおいしそうなのも、心をとらえました。タイトル曲『バラとひまわり』にはデザートとコーヒーが歌われているし、バイーアの郷土料理だという『ヴァタパー』をタイトルにした曲もあるし、恋人と別れた孤独な夜を「フェイジャオンを作ってくれる人がいない夕食」と表現しているし。

ちょっと調べてみたら、フェイジャオンはどうやらお味噌汁のような位置づけの家庭的豆スープのよう。サウダージなスープなのでしょうか。

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2010年06月06日(日曜日)

『FUTENMA360°』フテンマ:ようこそ、ドーナツタウンへ

東京カフェマニア主宰 川口葉子

100606kawag1.jpg今年の春、辺野古と並んで日本で最も話題にのぼった地名のひとつは、「フテンマ」だったかもしれません。アメリカ国防長官自身が「世界一危険な基地」と語った普天間。

私はその街の風景に、平均的な東京人よりもかなり多くの親しみと、それから不思議な感情を抱いています。何度も訪れたCAFE UNIZON(カフェユニゾン)はまさに普天間にあり、窓の外にはキャンプ・フォースターがひろがっているから。

先日、CAFE UNIZONから一冊のスペシャルなビジュアルブックとともに、こんなお知らせが届きました。


  ようこそ、ドーナツタウンへ
  米軍普天間基地を抱える、宜野湾市の素顔と魅力を
  そのままに伝えるタウンブック『FUTENMA360°』が
  完成しました!

 
なぜ360°かって? それは宜野湾市をドーナツに見立てているから。もちろんドーナツの中心の穴は、一般人立ち入り禁止の普天間基地。

中心が空洞になっている都市といえば、どうしたってロラン・バルトが綴ってみせた「皇居=不在の中心」を抱く東京を思い浮かべてしまうのですが、宜野湾市においては、ドーナツの穴は意味不在の空虚な中心どころではありません。

この本は、ドーナツである宜野湾市を「世界でも珍しい円環都市」と呼び、単に基地の街だけではない、フォトジェニックで多様な魅力を紹介する刺激的なタウンブックです。

(ページ見開き写真。首を90°かたむけてご覧ください)

100606kawag2.jpg秀逸なのは、現実の普天間に向けてシャッターを切りながら、それをリミックス、リデザインした仮想の完全円環都市「フティーマ」の絵地図として呈示しているところ。
※「フティーマ」とは、米兵たちによる普天間の異称だそうです。

基地のフェンス沿いに散歩する「フェンス・トレイル」、洞窟や森にひそむウタキなど、仄暗い異界に通じる「精霊指定地区」、迷路のような旧市街、アメリカの中古家具屋や雑貨店が並ぶオールド・アメリカン・タウン・・・一冊に凝縮された写真と文字の情報量は圧倒的!

たとえばいま、任意に開いた旧市街のページ「アコークローの街」の写真には、こんな言葉が添えられています。

  「アコークロー」とは、「明るい暗い」。
  つまり、夕陽の差し込む黄昏どきを表す沖縄語だ。
  古き良き昭和の面影を湛えるこの街には、
  そんな黄金色の色合いがよく似合う。
  「イチャリバ・チョーデー(出会えば、みな兄弟)」
  という言葉を実感できるのも、この街だろう。(後略)


「仮想都市「フティーマ」を紙上でぐるっとひと巡りするショートトリップ。本書はそれを通して、宜野湾の「今/現実」を知るガイドブックであり、来るべき基地返還という「未来/希望」へ向けたロードマップである」

本の詳細はこちら。唯一無二の宜野湾市ガイドブックとして、沖縄好きのかたはぜひお手元に。『FUTENMA360°』と『表徴の帝国』を同時読みするというのも、クールな楽しみ方かもしれません。

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