
2007年04月13日(金曜日)
清水の舞台から飛び降りる
東京カフェマニア主宰 川口葉子
東京でお花見の季節が終わると、あれほど日本じゅうで話題にされていた桜の花が、あっという間に忘れら去られてしまったようです。でもほんとうは、桜は今も花ざかり。豪華な花弁の八重桜、たなびく霞のような山桜。
誕生日が近づくと、夫のプロポーズを思い出します。それは○○年前、私の誕生日に、ふたりで京都へ遅い桜を探しに出かけたときのこと。ャ<Cヨシノはとうに散っていましたが、有名な観光ポイントではない小さな史跡のあちこちに、さまざまな桜が淡い日射しのなかでひっそりと花を咲かせていました。
清水寺の舞台で夕陽を眺めているときに、夫は結婚しようと言ったのでした。「清水の舞台から飛び降りるという気持ちを表現した」とのこと……どうなんでしょう、そのセンス。
しかし、迷う気持ちはなく、周囲にも祝福されて驚くほどスムーズにものごとが運び、気がついたら一生のパートナーになっていました。
夫と出会ったのは、私が会社で働きながら小劇場のお芝居の脚本を書いていた時代。毎日あまりにも時間が足りなくて、恋人がほしいと言っている余裕さえなかったのですが、私はその日々におおむね満足していました。自分の持つエネルギーを、好きなことに向かって全力で注ぎ込んでいるのですから、寝不足だろうと小さなトラブルの連続であろうと、楽しくないはずがありません。そして夫は、役者のひとりとして私の前に登場しました。
そんな経験から、友人が「一生を共に歩んでいける相手に巡りあいたい」とつぶやいたときには、わざわざ恋人探しに奔走したりせずに、自分がほんとうに好きなことに集中していれば、自動的に出会えることになっていると思うと言ってみたりしています。

2007年04月08日(日曜日)
カウアイ島奇譚
東京カフェマニア主宰 川口葉子
(左の写真はカウアイ島で出会ったBLUE JADEの花。まさに青い翡翠の名にふさわしい繊細な色の階調を持つ、息をのむような美しさでした)
先週、ひょんなご縁のもとに集まった5名の女性たちといっしょに、カウアイ島1週間の旅をしてきました。緑ふかい古い島の呼吸に包まれて過ごす日々は、魂の奥底が大地に感応してふるえるよう。毎日、大小の不思議を体験していました。
不思議のひとつは、たとえばカウアイ島を案内してくれたアメリカ人女性の歌声。彼女の名を、ここでは仮にアリスとしましょう。霧に包まれたワイメア渓谷の頂上で、アリスは持参のクリスタルボウルをゆっくりと振動させながら歌をうたってくれました。私たちは芝生の上に車座になってすわり、目を閉じてアリスの歌声とクリスタルボウルの響きに耳を澄ましていました。
おかしなことに気づいたのは、ゆるやかなリズムの歌が始まってほどなくしたころ。歌っているのはアリスだけのはずなのに、その旋律に合わせて、いつのまにかもうひとりの歌声が聞こえてきたのです。最初はクリスタルボウルの倍音が響いているのだろうと考えたのですが、どうもそうではないようです。なぜって、もうひとつの不思議な歌声は、きれいな三度でハーモニーをつけたかと思うとふっと消え、また現れては、アリスの歌声が音階を下降しているときに上昇したりしたから。
驚いて目を開け、あたりを見回してみたのですが、歌っているのはやっぱりアリスだけ。いったい誰の声が聞こえているのでしょう? 目を開いているあいだにもうひとつの声は小さくなって聞こえなくなりましたが、再び目を閉じていると、またかすかに響いてきます。
やがてアリスが歌い終わると、聴衆6名はちょっと騒然となりました。私だけでなく、全員がアリス以外のもうひとつの歌声に気づいていたのです。さらに不思議なことに、私の耳にはそれはハーモニーとして聞こえたし、ある女性の耳にはユニゾンとして聞こえ、またある女性の耳には歌声ではなく、早口の話し言葉として聞こえたのでした。
いっせいに「今の歌はなに?」と疑問を口にした私たちに、アリスは静かにほほえんで教えてくれました。彼女は歌い始める前に、精霊に今この場所に舞い降りてくれるよう祈ったのだと。
それでは、私たちがアリスの歌声とともに聞いたのは、カウアイ島の苔むす大気の中に太古から漂っている精霊の歌声だったのでしょうか?
東京に戻ってから思い返せば、あまりにも現実離れしてばかげたことに思えますが、カウアイ島の圧倒的な緑の密度、人間の想像力が及びもつかない歳月を生きてきた大地の放つバイブレーションの中では、それは「ありえること」としてすんなり腑に落ちたのでした。

2007年04月07日(土曜日)
ジャン=ポール・エヴァン東京ミッドタウン店
東京カフェマニア主宰 川口葉子
※先週は海外旅行のためほんわか茶日誌を書くことができませんでしたので、今週はそのぶん、今日と明日の2回、続けて更新しますね。どうぞよろしくお願いいたします。
先月末にグランドオープンした東京ミッドタウンは地上54階。現在都内で最も高い高層ビルとなったこの複合施設には、ジャン=ポール・エヴァンも出店しています。すでに足を運ばれたかたもいらっしゃるでしょうか。
ジャン=ポール・エヴァン店内に設けられた「バー ア ショコラ」はいわばチョコレートを楽しむためのティールーム。ここ東京ミッドタウンのバー ア ショコラでは、すでに伊勢丹新宿店のバー ア ショコラでおなじみの極上のショコラ ショ(ホットチョコレートドリンク)やマカロン、ケーキなどのほか、日本国内初の試みとして、パリのサントノレ店のサロン・ド・テと同じような軽食が楽しめます。
グランドオープンをひかえたプレスプレビューの日、来日しているジャン=ポール・エヴァン氏にお話をうかがうことができました。黒い衣装に身を包んだ彼がスタッフを指導する姿は、おだやかで優しい口調ながら鋭い眼光。納得のいく一皿への妥協を許さない姿勢がうかがえます。
軽食メニューに並んでいるのは、キッシュ、サンドイッチ、パスタグラタンなど、いずれも「チョコレートを召し上がる前に、ちょっとお食事をお楽しみください」という位置づけ。特におすすめの一品はどれでしょう、と質問したところ、ジャン=ポール・エヴァン氏は少し考えてからこう答えてくれました。
「自分の気に入ったものしか出していませんから、全部おすすめです(笑) それぞれのメニューに、なにかしらスペシャルなものがあります。たとえばチーズが好きな方には、『フロマージュ アャ泣eィ』(バゲット付き 2625円)」の一皿にマリ=アンヌ・カンタンのチーズを選んでいますから、大変おいしく食べていただけると思います」
これはイタリア、エミリアロマーナ州のパルミジャーノ・レジャーノと、フランス、バスク地方のオッメ[イラティ、そしてスイス、ジュラベルノワ地区のテットゥドモワンの3種類のチーズの盛り合わせ。メニューにはグラスの赤ワイン(ブルゴーニュ)も用意されていますので、チョコレートのお楽しみを最後に残して、のんびりグラスをかたむけられそうですね。

2007年03月25日(日曜日)
刻むことば
東京カフェマニア主宰 川口葉子
英国の湖水地方へ、foot path(フットパス)の散歩を目的に旅したことがあります。
この国の人々はしんそこ散歩が好きなのだということがよくわかるフットパス。それはイギリス全土を網羅する散歩道の呼び名です。国有地はもちろん、個人所有の農場や牧草地、林などの中も「お好きに散歩していいですよ」と開放されており、人間ひとりがやっと歩けるくらいの細道がどこまでも続いています。
見渡す限りのゆるやかな丘、また丘。新鮮な緑の匂いを鼻からも皮膚からも吸い込むようにしてフットパスを散歩すると、いやおうなしに、人間が一生かかって踏みつける分量の羊のフンを踏んでしまうことになります。あまりにもそこらじゅうにこまかく散らばっているので、避けようがないのです!
羊や牛の放牧地の中を抜けるフットパスを歩いていると、ときどき胸までの高さの小さな木戸にぶつかります。これは飼っている羊や牛が通り抜けないようにするため。木戸を開けた人間は、きちんと閉めてから去るのがマナーです。
この木戸に、小さな金属のプレートが打ちつけられているものを見かけました。プレートには「ジェーンの想い出に」とか「John Smith, 1900-1972」などとプライベートなメモリアルが刻まれていて、通りすがりの旅行者の想像をかきたてるのです。
先日、日比谷公園のベンチの背もたれに、よく似たものをみつけました。名前と日付だけを刻んだシンプルなプレートがあると思えば、依頼者の愛情が伝わってくるプレートもあり、眺めているとおもしろいものです。
○○から東京に嫁ぎ、六女]年の思い出に。
静尾さんへ。生誕百年記念。子供一同
これは母親が百歳を迎えたことを祝って、子ども(といっても70代になっているのでしょうが……)たちが贈ったのでしょうか。かりに自分がこのプレートに刻むとしたら、どんなことばを選ぼうかしらと、あれこれ考えて楽しみました。

2007年03月17日(土曜日)
梅舎茶館(池袋)
東京カフェマニア主宰 川口葉子
もう何年も前からずっと、池袋に良い中国茶カフェがありますよと繰り返し聞いていたのに、池袋という街にあまりご縁がないこともあって行きそびれていました。それが梅舎茶館です。小さなお店ではあるけれど、数多い品揃えの中国茶がきちんとおいしくて、台湾の茶芸館さながらのひねもすのたりのたりした時間が流れており、なにより女性店主のヨーダさんのお人柄がとてもあたたかくて楽しいのだと。
3月、東京都心に遅い初雪が舞った翌日。 池袋のジュンク堂書店で本の探しものをしたあと、裏手に梅舎茶館があるはずだということを思い出し、連れとふたりで足をのばしてみました。お店の看板はすぐに見つかりました。たぶんこの日こそ、私が梅舎茶館と出会うべきタイミングだったのでしょう。その理由はあとでわかりました。
店内にはたくさんの茶器や茶缶、鳥かご、なにに使うのかわからない置物など、いかにも中国を感じさせる可愛さと不思議さが交錯した雑貨たちがあふれています。なかでも私の目は、窓辺のカウンターのすみに並べてあった「人間の足」と「豚の頭」に釘付けになりました。なぜ豚の頭? なぜ、足? おまけになぜ、甲の上に黒い虫が?
ヨーダさんにうかがって、それらが立派な中国茶グッズであることが判明しました。盤の上にこの足を置いて上からお湯を注ぐと、かかとの部分にあいた小さな2つの穴から水が飛び出すのだそう。そのささやかな趣向を眺めて楽しむというわけですね。ずいぶん凝ったことを考えるものです。
「でも、なぜ虫がついてるんですか? これはキリギリスかコオロギ?」
「そうですね、鳴く虫だと思います。たぶん中国語にすると、虫と水とで縁起の良い言葉の語呂合わせになるんじゃないかと思います」
なるほど! 台湾お茶旅行をしたとき、人々がそのような縁起にびっくりするほどこだわるのを実感したことがありますから、納得のいく説明でした。可愛いのか怖いのかわからない豚の頭も同様にして使い、なんと豚の鼻の穴から水が出るのだそうです。中国では豚はたいへん縁起の良い動物とされているのですよね。
ヨーダさんはこの話をもっときちんと正確に説明してくださったのですが、私はそのあとのお話にちょっとどきどきしたせいで、ディテールが頭から抜け落ちてしまいました。お店の入口でたくさんのフラワーエッセンスを目にして、なぜ中国茶カフェにそのようなものがあるのですかと訊ねたら、ヨーダさんがセドナを訪れた際にインスピレーションを感じたとのこと。私も2月に行ってきたばかりのセドナの赤い岩山を思い出し、今日の出会いはセドナのご縁かしらと思ったのでした。

2007年03月11日(日曜日)
ホラリー占星術~宇宙への質問
東京カフェマニア主宰 川口葉子
占星術に興味のあるかたなら、1年に数回起きる水星のレトログレード(逆行)期間というものをご存知かもしれませんね。今年の2月から3月上旬にかけても水星の逆行があったばかりですが、この期間はコミュニケーションのすれ違いが起こりやすく、情報が混乱し、ものごとが停滞しがちとされています。
どういうわけか、私はこの水星の逆行というものの影響を受けやすいようで、なんだか小さな噛み合わせがずれてものごとがスムーズに運ばないな、と感じはじめると、天空では水星が逆行に入っていることが多いのです。逆行期間中は、まるでプールの中に立ち、両腕で水をかいて走ろうとしているような重たさ。そして逆行が終わると、おもしろいようにすっきりとものごとが動き始めます。
そんなわけで、天体の動きから宇宙の法則を読み解こうとする占星術には以前から関心を寄せてきたのですが、ひょんなご縁があって、信頼のおける占星鑑定をしてくれると評判の高い「星*花日記」のtriple-nuts-chocolateさんにメールで個人鑑定をしていただくことになりました。
ひとくちに占星術といってもさまざまな手法がありますが、triple-nuts-chocolateさんの手法は、噂に聞くホラリー占星術と誕生日のチャートを組み合わせたもの。日本ではまだあまりなじみのないこの高度な占星術は、別名「時間占星学」と呼ばれ、ピンポイントな問いにも高解像度のシャープな回答を得られるのが特徴です。
triple-nuts-chocolateさんご自身の言葉によれば「ホラリーは、特定の問題が投げかけられた時間でホロスコープを作成して占うものです。私は、シェイクスピアの時代の古い方法を下敷きに、その後独自の観点も交え、今のような感じになってきています。ご質問者さまとのやりとりや、ご依頼事項、私の技量の限界、、などによって使うテクニックは変わります」
彼女を通して宇宙の星々にアドバイスを求めたかったのは、最近浮かんできた仕事上の迷いでした。宇宙に向かって質問するときには、質問内容がクリアであればあるほどいいようです。メールで何度かやりとりをして彼女から投げかけられた簡単な質問に答えていくうちに、自然に心の中で揺れている迷いの本質を自分でも確認することになりました。私が本当に宇宙にたずねたいことは何?
だから、届いた鑑定結果の最初のページに「私の占いは生年月日のデータだけではなく、ご依頼者さまが星に問いかけようとする力を必要とします」と書かれてあるのを見て深く納得したのです。
続くページに書かれていたことは、ひとつひとつが、思わず眉がつりあがるほど、その通りでした。そのメッセージは的確で客観的なものですが、同時に私の迷いをあたたかく優しく包み込んでくれるtriple-nuts-chocolateさんの世界観も伝わってきて、読み終えたときには大きな勇気と希望を手にしていました。問題はあいかわらずそこにあるのに、なんとすっきり晴れやかな気持ちになれたことでしょう。感謝せずにはいられません。
事前のメールの中で、私は具体的な質問といっしょに、最終的にたどりつきたい漠然とした夢も書き添えていたのですが、鑑定の最後のほうにはその夢に対してこんな嬉しい言葉が書かれていました。
「変化をしみじみと実感できるのは、もっとずっと後のことになるでしょう。でも、そのプロセスは素晴らしいものです。形に見えないからといって、しょせん夢の世界なんだ、空想して遊んでいるんだと決めつけて蔑んではいけません。
占星術的な解説が多くて恐縮なんですけど、いちおう根拠を申し上げましょうね。その夢みたいな世界に、ドラゴンと幸運のパーツがダブルでいます。祝福されていますよ。
この導きの星(水星です)は文筆の星でもあると同時にmediumship、2つの要素の橋渡しをする、伝える、という性質を浮オます」
遠くのほうにそんなサインが待ち受けていてくれるなら、水星の導きのもとで、ときおり逆行に悩まされながらも鼻歌をうたいながら歩いていこうではありませんか。

2007年03月04日(日曜日)
不都合な真実に、ハチドリのひとしずく
東京カフェマニア主宰 川口葉子
映画と本『不都合な真実』からはアル・ゴアのきまじめと言ってもいいくらいの誠実さが伝わってきますね。いま起きている地球環境の破壊の原因は私たち人間にあるのだということを、さまざまな数値を正確に、淡々と並べていくことで証明していきます。
映画を通してなによりも強い印象を受けたのは、アメリカではまだ「地球温暖化は人間のせいではない」と強弁する政治家や政府・企業おかかえのメディアがしぶとく生き残っていて情報を操作し、一般の人々に混乱を与えていることでした。だからアル・ゴアはあんなふうに、信頼できる数値や統計をたくさん集めて、正確な情報を与えられていない人々にむかって、環境破壊は私たち自身のせいなのだと証明しなければならなかったのですね。
アル・ゴアのきまじめさに好感を抱きつつも、もしも同じ素材をマイケル・ムーアが映画に料理したらどのようになっただろうかと想像せずにはいられませんでした。
マイケル・ムーアは自分が疑問を抱いた社会問題に対して、ベースボールキャップをかぶった陽気なデブ(失礼!)という外見をフルに活用し--誰だって、そのユーモラスな外見にはつい油断してしまいます--大胆なアポイントメントなしの突撃インタビューを重ね、痛快なドキュメンタリー映画に仕立ててきました。
たとえば、アメリカの高校で実際に起きた銃乱射事件を糸口に、銃社会を痛烈に批判した『ボウリング・フォー・コロンバイン』。この問題にほとんど関心を抱いていなかった私にも、その実態と、銃を手放そうとしない人々の心理が、マイケル・ムーアの冗談かと思うほど単刀直入なインタビューを通してストレートに伝わってきます。”陽気なデブ”からシンプルな質問を受けて絶句する銃賛成論者たちの姿に、快哉を叫ばずにはいられません。
ただし、次の作品『華氏911』はブッシュ大統領を批判する映像が、あまりにも強引にマイケル・ムーアの都合のいいように編集されていて、さすがにこれはやりすぎだと感じずにはいられませんでしたが。とにかく、もしこの人が『不都合な真実』を撮ったらさぞかし見物だったことでしょう。
さて、「人間が引き起こしたことだから、人間の手で解決できる」というアル・ゴアの力強いメッセージに対して、私たちはどのようにこたえていけるでしょうか? 私は友人の家で食卓を囲んだときに小さなヒントをもらいました。用意されたお料理をつまみながら楽しく時を過ごしたあと、帰るときになってお皿洗いを申し出たら、こんな言葉がかえってきたのです。
「あ、いいの。お皿洗いは好きだし、お湯でさっと洗うだけだから。お湯だとよく落ちるのよ」
彼女は生活排水による汚染を少しでも減らそうと、台所で洗剤を使わないことにしていたのです。そういえば用意してくれたお料理もたくさんの野菜を炭火で焼いたり、銀杏をあぶったりしたもので、ほとんど油が使われていませんでした。それでもお皿にちょっとした油が残ることがあれば、洗う前に新聞紙でお皿をぬぐっておくことで、お湯だけで充分に落ちるのですよね。
彼女は声高に「地球を守れ」と叫ぶことはしません。ただ静かに、自分のできることを最大限に実践しているだけです。彼女の暮らし方は、環境問題にまつわる名作絵本『ハチドリのひとしずく』そのもののように思えました。

2007年02月25日(日曜日)
小さな妖精のおじさん(ジャージ着用)
東京カフェマニア主宰 川口葉子
最近友人たちとのメールでもちきりの話題、それは「小さなおじさん」です。あなたは目撃したことがあるでしょうか、身長10cm~20cm、緑色または黒のジャージを着た、妖精のおじさんを?!
たんすのひきだしを開けたら、親指くらいしかない小さなおじさんがびっくりして振り向いた……バッグを開けてノートを取り出そうとしたら、バッグの中から小さなおじさんがぴょーんと飛び出してきて物陰に隠れた……畳の上で眠っていたら、小さなおじさんたちが集まってきて、髪の毛をガリバーのようにして畳の目に編み込まれてしまった……など、これ以上ないくらいばかばかしく、ゆえに、その光景を想像するとおかしくてたまらない汚b。
これまでにも、松任谷由美、釈由美子、岡田准一など多数の有名人が「小さな妖精のおじさんを見たことがある」という発言をしては、あきれられるか、つまらない冗談だと一笑に付されてきた歴史があるようですが、なんと私の身近にも目撃者がいました。
その友人によれば、どんな家にも小さな妖精のおじさんは必ずいる、とくに川口さんは常日頃お世話になっているはず、とのこと。
「探しものが出てきたら、小さなおじさんにお礼を言っておくといいでしょう」
どうやら、あるはずものがなくなっていたり、思いもよらない場所から出てきたりするのは、小さなおじさんたちの仕業らしいのです(笑) その説が本当なら、うちには小さなおじさんが軍団をなして1ダースくらいうようよしているかもしれません。
それにしても、なぜジャージを着ているのか、人間の家でなにをしているのか、それぞれに名前はあるのか、小さなおじさんは謎だらけです。

2007年02月18日(日曜日)
熱のある日
東京カフェマニア主宰 川口葉子
風邪をひいて熱をだすときには、クセのようなものがありますね。ひとによっては、熱でダウンして寝ているあいだに、なにものかに追いかけられる夢をみるそうですし、私は熱がぐんぐん上がっている最中には、背骨に力が入らず、しゃんと座っていることができなくなって、軟体動物のようにぐんにゃりとベッドにまるまってしまいます。
3日前にとつぜん発熱と強い喉の痛みに襲われました。一日中ベッドの中でうなされながら眠っているか、枕を起こして、ぼーっとした頭で本を読んでいるかという状態で数日を過ごしたのですが、ふと天井を見上げたら、カドが異常にとがって見えることに驚きました。
部屋の四隅や柱、梁などのカドが、かつてないほどに鋭く、くっきりとこちらに突き出して見えているのです。こちらの身体がぐにゃぐにゃとしているおかげで、固い無機物の力強さに圧倒されがちなのでしょうか。しばらく新鮮な気持ちで、部屋じゅうのカドというカドを眺めて過ごしました。

2007年02月10日(土曜日)
セドナの虹色
東京カフェマニア主宰 川口葉子
この写真はアリゾナ州セドナのパワースポットとして名高い4大ヴォルテックスのひとつ「ベルロック」で撮影したもの。空気の冴えわたった朝にベルロックに登って頂上にカメラを向けたら、左側に美しい虹色の光線が写りました。
ベルロックは遠くから眺めるとと、みごとな釣鐘型をしています。セドナの赤い岩山には、その形状から楽しい名前がついているものがたくさんあるのです。泊まったホテルのテラスからよく見えていたのは「コーヒーポット・ロック」。言われて見ればたしかに注ぎ口も取っ手もついていて、コーヒーポットそっくり。背後に雲がたなびいていると、まるでポットから湯気がふんんわりたちのぼっているよう。今回は見ることができませんでしたが、ティーポット・ロックもあるそうです。
有名なところでは、スヌーピーが昼寝をしている姿にそっくりの「スヌーピー・ロック」。ごていねいにもその左上には、意地悪なルーシーによく似た姿の岩「ルーシー・ロック」もあるんですよ。
右の写真はやはり4大ヴォルテックスのひとつ、カセドラルロック。息をきらして岩山をよじのぼらねばならないミニ登山コース(いえ、案内してくれた女性ガイドさんはかるがると登っていましたが)の終点から、さらにそびえたつ巨大な岩壁に沿って左側にまわりこむと、不思議に神聖な空気に満ちたこの地点にたどりつきます。岩肌に腰をおろし、目を閉じて静かに深呼吸を続けながら、大地の音を聞くことに挑戦してみました。
鳥のさえずり、頭上をゆく飛行機。それらの音を頭の中でひとつひとつ消していって、残ったのは巨大なガラスの鐘を叩いた残響のような、キーンという高音でした。耳の中で響いているようでいて、耳鳴りではない、澄みきった音色。
はたしてそれが本当に大地の音なのかどうか確かめようもありませんが、その音は、なぜか突然インドメタシン100%のスプレーを吹きつけられたように、とんでもなく爽快なびりびり感でいっぱいになってしまった首から背中にかけての感覚とともに、鮮烈な記憶として残りました。