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2007年05月19日(土曜日)

瞳のなかの知らないひと

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070519kawag2.jpgはるかな時を超えて、幾たび生まれ変わっても、瞳だけは変わらないのだという話を聞いたことがあります。
たいしてロマンティストではない私は、え、じゃあもともと青い瞳を持っていた人間は、日本人に生まれても青い瞳のままなの?……などと考えてしまったのですが、きっと瞳が表現している本質が変わらないということなのでしょう。

だから、時代を超えて魂が強く結ばれている者どうしは、お互いの瞳をじっとのぞきこめば、その深いつながりを思い出せるのだと。

ためしにカフェでコーヒーを飲みながら夫の瞳を凝視していたら、何ひとつ思い出せないうちに「おなかでもすいたの?」と言われてしまったので(私が真剣に空腹を訴えているように見えたのでしょう)、深夜に鏡に向かって、自分の瞳を見つめてみることにしました。

なにが見えたと思いますか? ブラウンの虹彩と黒い瞳孔の中で、私は見たこともない他人と出会ってしまったのです。それは自分のからだの中に宇宙人が入っているのをみつけたような驚きでした。

何十年も自分とつきあっていると、自分に対する興味はどんどん薄れていくものです。また、若いひとが何かにつけ「私はこういう性質で…」と表現する様子をいかにも初々しいと微笑したりするものですが、まだ全然知らない自分が隠れているのだと知ることができたのは、ちょっとした収穫だったかもしれません。

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2007年05月11日(金曜日)

教科書タイムトラベル

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070511kawag.jpg国語の授業はひどく退屈だった、教科書には何のおもしろみもなかったと語ることが、少なくとも私たちの年代ではお決まりになっているようですが、ほんとうにそうだったでしょうか? おしつけられたり採点されたりするのは苦痛でしたけれども、じつのところ私は小学生の頃から高校時代にいたるまで、教科書に載っていた作品を授業中にけっこう楽しんで読んでいたのです。

最近になって、痛烈にもう一度読み返したい気持ちになったのが川端康成の随筆。しかし困ったことに、どうしても題名を思い出すことができません。Amazonで川端康成の随筆集などを取り寄せてみたのですけれども、探しあてることができませんでした。

そういえば、母はらくがきだらけの私の教科書を大切に保管してくれていたはず。そう思いついて実家に電話をかけ、「中学生のときに使った教科書、まだうちにある?」とたずねてみたところ、つい最近、ゴミが有料化されるときに処分してしまったとか。

残念がる私にすまないと思ったのでしょうか、母はわざわざ市立図書館に電話して、国語の教科書があるかどうか問い合わせてくれました。
「平成元年からの教科書は揃えてありますが、残念ながらそれ以前のものはございません」

ああ、今もくっきりとガラスのコップの輝くイメージが心に残るあの美しい文章には、もう二度とお目にかかれないのでしょうか? その短い随筆では、ハワイのホテルの朝食の食堂で、ガラスのコップの群れが星のように日光にきらめくのを驚きをもって見たことが綴られ、「一期一会」という言葉でしめくくられたのでした。

あまりに多くの人々がたやすく座右の銘として語ったりするので、もはや香りの抜けきった出がらしになってしまった感のある「一期一会」という言葉。でもその随筆の中では、ひとやま300円で大安売りされているような一期一会ではなく、とるにたらないガラスのコップに映る光とのかけがえのない邂逅が「文学とは、また人生とは、このようなものではないでしょうか」と、思索を深めながら語られていたような気がするのです。

川端康成がその光を見たのがハワイのカハラ・ヒルトン・ホテルだったということまで覚えているのに、タイトルを覚えていないとは……と自分の記憶のバランスの悪さを嘆きながら、最後の手段で光村図書に問い合わせてみることにしました。

まずインターネットで光村図書のWebサイトを検索すると、ホームページに「教科書タイムトラベル」というコーナーがあるのを発見。昭和30年からの教科書に収録されていた作品の題名一覧が、年代ごとに並んでいます。ここでようやく、知りたかった題名が判明したのでした。『朝の光の中で』。

光村図書の対応は、すばらしいとしか言いようがありませんでした。「『朝の光の中で』をもう一度読みたいのですが」とお願いすると、コピーをとってFAXで送ってくれたのです。

最後のページには「学習のてびき」として「著者は、自分が発見したコップの美しさについて、どのような考えを述べているか、次のことに気をつけて、まとめてみよう。(1)コップの美しさと、『ハワイの美しさを象徴する著しいもの、よそにたぐいのないもの』との関係」などと、いささか難しいことが書かれていました。現在の私がこの課題をこなせるかどうか自信がないのですが、わずか3、4年しか教科書に掲載されなかったらしいこの掌編に出会うことができたことが、私の大切な「一期一会」のひとつです。

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2007年04月29日(日曜日)

屋上ごはん

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070427kawag1.jpg
まばゆい太陽光線の中には
おいしさ倍増成分が含まれているようです。
青空のもとでごはんを食べると
いきいきした味と匂いが舌の上で踊ります。

お皿の上の料理やグラスの中の液体も
太陽光線を浴びて
気持ちよさそうに深呼吸していますから
その気持ちよさが、料理を食べたひとの
体内にも流れこむのでしょう。


070427kawag2.jpg駒沢公園に隣接する友人の家で
屋上ごはんをいただきました。
小さなテーブルの横には
アメリカ人のご主人が愛でている
鉢植えのもみじのやわらかでみずみずしい緑、
そのむこうには、公園のたっぷり豊かな緑。

階下のキッチンにたちこめていたのは
そらまめがほくほくと湯気をあげる匂い、
パルミジャーノ・レジャーノがこんがり焼ける匂い。
はちみつで作ったドレッシングに
明るい色のにんじんがひたされる匂い。

きりりと冷やしたスパークリングワインの栓を抜けば
この世界に足りないものはなにひとつない
--そんな屋上の一日。

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2007年04月21日(土曜日)

自由が丘「とろそば屋」

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070421kawag1.jpg4月に自由が丘にオープンしたばかりのラーメン屋さん「とろそば屋」をちょっとのぞいてまいりました。

店内はいたって気取らない雰囲気です。いただいたのはお店の看板メニュー、赤鶏の骨つき肉を気前よくのせた1日限定10食のみの「赤鶏もも塩そば」(950円)。麺の上にふっくらジューシーに煮込んだ鶏肉がぽん!とのっていて目を見はりました。お箸を入れると、お肉がほろりと柔らかくほぐれます。

スープのベースは赤鶏をまるごと、とろとろになるまで溶かしたもの。これにちなんで店名も「とろそば屋」に決めたのだそう。

メニューには塩系スープとしょうゆ系スープが並んでいますが、塩系スープには、鶏のベースに12種類の素材を使ったスープを加えて濃厚なコクを出しており、ちょうどお酒を飲んだあとのしめくくりに立ち寄るのにぴったりの塩加減。……カロリーのことがちらりと頭をかすめますが、スープにはコラーゲンが豊富に含まれていますし、茹でたホウレン草もたっぷりのっていますから、美肌が期待できるというもの。これで心がやすまりますね(?!)

070421kawag2.jpgとろそば屋のもうひとつの自慢は、猫舌にも嬉しい「のびない」麺。
これまで何店舗かラーメン店を経営してきた店主の山本さんは、小さな子ども連れの女性が、すっかりのびてしまったラーメンをすすっている光景にも心を痛めていたとか。そんなわけで、麺の楓ハに特殊なひと工夫を加え、ラーメンを食べ終えるまでのびない麺を独自に開発したのだそう。食べるのがゆっくりの女性にも嬉しいラーメンです。

【らあめん とろそば屋】
目黒区自由が丘2-13-3/TEL 03-5701-5702
11:00~24:00 無休

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2007年04月13日(金曜日)

清水の舞台から飛び降りる

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070413kawag1.jpg東京でお花見の季節が終わると、あれほど日本じゅうで話題にされていた桜の花が、あっという間に忘れら去られてしまったようです。でもほんとうは、桜は今も花ざかり。豪華な花弁の八重桜、たなびく霞のような山桜。

誕生日が近づくと、夫のプロポーズを思い出します。それは○○年前、私の誕生日に、ふたりで京都へ遅い桜を探しに出かけたときのこと。ャ<Cヨシノはとうに散っていましたが、有名な観光ポイントではない小さな史跡のあちこちに、さまざまな桜が淡い日射しのなかでひっそりと花を咲かせていました。

清水寺の舞台で夕陽を眺めているときに、夫は結婚しようと言ったのでした。「清水の舞台から飛び降りるという気持ちを表現した」とのこと……どうなんでしょう、そのセンス。

しかし、迷う気持ちはなく、周囲にも祝福されて驚くほどスムーズにものごとが運び、気がついたら一生のパートナーになっていました。

夫と出会ったのは、私が会社で働きながら小劇場のお芝居の脚本を書いていた時代。毎日あまりにも時間が足りなくて、恋人がほしいと言っている余裕さえなかったのですが、私はその日々におおむね満足していました。自分の持つエネルギーを、好きなことに向かって全力で注ぎ込んでいるのですから、寝不足だろうと小さなトラブルの連続であろうと、楽しくないはずがありません。そして夫は、役者のひとりとして私の前に登場しました。

そんな経験から、友人が「一生を共に歩んでいける相手に巡りあいたい」とつぶやいたときには、わざわざ恋人探しに奔走したりせずに、自分がほんとうに好きなことに集中していれば、自動的に出会えることになっていると思うと言ってみたりしています。

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2007年04月08日(日曜日)

カウアイ島奇譚

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070407kawag1.jpg(左の写真はカウアイ島で出会ったBLUE JADEの花。まさに青い翡翠の名にふさわしい繊細な色の階調を持つ、息をのむような美しさでした)

先週、ひょんなご縁のもとに集まった5名の女性たちといっしょに、カウアイ島1週間の旅をしてきました。緑ふかい古い島の呼吸に包まれて過ごす日々は、魂の奥底が大地に感応してふるえるよう。毎日、大小の不思議を体験していました。

不思議のひとつは、たとえばカウアイ島を案内してくれたアメリカ人女性の歌声。彼女の名を、ここでは仮にアリスとしましょう。霧に包まれたワイメア渓谷の頂上で、アリスは持参のクリスタルボウルをゆっくりと振動させながら歌をうたってくれました。私たちは芝生の上に車座になってすわり、目を閉じてアリスの歌声とクリスタルボウルの響きに耳を澄ましていました。

おかしなことに気づいたのは、ゆるやかなリズムの歌が始まってほどなくしたころ。歌っているのはアリスだけのはずなのに、その旋律に合わせて、いつのまにかもうひとりの歌声が聞こえてきたのです。最初はクリスタルボウルの倍音が響いているのだろうと考えたのですが、どうもそうではないようです。なぜって、もうひとつの不思議な歌声は、きれいな三度でハーモニーをつけたかと思うとふっと消え、また現れては、アリスの歌声が音階を下降しているときに上昇したりしたから。

070407kawag2.jpg驚いて目を開け、あたりを見回してみたのですが、歌っているのはやっぱりアリスだけ。いったい誰の声が聞こえているのでしょう? 目を開いているあいだにもうひとつの声は小さくなって聞こえなくなりましたが、再び目を閉じていると、またかすかに響いてきます。

やがてアリスが歌い終わると、聴衆6名はちょっと騒然となりました。私だけでなく、全員がアリス以外のもうひとつの歌声に気づいていたのです。さらに不思議なことに、私の耳にはそれはハーモニーとして聞こえたし、ある女性の耳にはユニゾンとして聞こえ、またある女性の耳には歌声ではなく、早口の話し言葉として聞こえたのでした。

いっせいに「今の歌はなに?」と疑問を口にした私たちに、アリスは静かにほほえんで教えてくれました。彼女は歌い始める前に、精霊に今この場所に舞い降りてくれるよう祈ったのだと。

それでは、私たちがアリスの歌声とともに聞いたのは、カウアイ島の苔むす大気の中に太古から漂っている精霊の歌声だったのでしょうか?

東京に戻ってから思い返せば、あまりにも現実離れしてばかげたことに思えますが、カウアイ島の圧倒的な緑の密度、人間の想像力が及びもつかない歳月を生きてきた大地の放つバイブレーションの中では、それは「ありえること」としてすんなり腑に落ちたのでした。

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2007年04月07日(土曜日)

ジャン=ポール・エヴァン東京ミッドタウン店

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070330kawag1.jpg※先週は海外旅行のためほんわか茶日誌を書くことができませんでしたので、今週はそのぶん、今日と明日の2回、続けて更新しますね。どうぞよろしくお願いいたします。

先月末にグランドオープンした東京ミッドタウンは地上54階。現在都内で最も高い高層ビルとなったこの複合施設には、ジャン=ポール・エヴァンも出店しています。すでに足を運ばれたかたもいらっしゃるでしょうか。

ジャン=ポール・エヴァン店内に設けられた「バー ア ショコラ」はいわばチョコレートを楽しむためのティールーム。ここ東京ミッドタウンのバー ア ショコラでは、すでに伊勢丹新宿店のバー ア ショコラでおなじみの極上のショコラ ショ(ホットチョコレートドリンク)やマカロン、ケーキなどのほか、日本国内初の試みとして、パリのサントノレ店のサロン・ド・テと同じような軽食が楽しめます。

グランドオープンをひかえたプレスプレビューの日、来日しているジャン=ポール・エヴァン氏にお話をうかがうことができました。黒い衣装に身を包んだ彼がスタッフを指導する姿は、おだやかで優しい口調ながら鋭い眼光。納得のいく一皿への妥協を許さない姿勢がうかがえます。

070330kawag2.jpg軽食メニューに並んでいるのは、キッシュ、サンドイッチ、パスタグラタンなど、いずれも「チョコレートを召し上がる前に、ちょっとお食事をお楽しみください」という位置づけ。特におすすめの一品はどれでしょう、と質問したところ、ジャン=ポール・エヴァン氏は少し考えてからこう答えてくれました。

「自分の気に入ったものしか出していませんから、全部おすすめです(笑) それぞれのメニューに、なにかしらスペシャルなものがあります。たとえばチーズが好きな方には、『フロマージュ アャ泣eィ』(バゲット付き 2625円)」の一皿にマリ=アンヌ・カンタンのチーズを選んでいますから、大変おいしく食べていただけると思います」

これはイタリア、エミリアロマーナ州のパルミジャーノ・レジャーノと、フランス、バスク地方のオッメ[イラティ、そしてスイス、ジュラベルノワ地区のテットゥドモワンの3種類のチーズの盛り合わせ。メニューにはグラスの赤ワイン(ブルゴーニュ)も用意されていますので、チョコレートのお楽しみを最後に残して、のんびりグラスをかたむけられそうですね。

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2007年03月25日(日曜日)

刻むことば

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070323kawag2.jpg英国の湖水地方へ、foot path(フットパス)の散歩を目的に旅したことがあります。
この国の人々はしんそこ散歩が好きなのだということがよくわかるフットパス。それはイギリス全土を網羅する散歩道の呼び名です。国有地はもちろん、個人所有の農場や牧草地、林などの中も「お好きに散歩していいですよ」と開放されており、人間ひとりがやっと歩けるくらいの細道がどこまでも続いています。

見渡す限りのゆるやかな丘、また丘。新鮮な緑の匂いを鼻からも皮膚からも吸い込むようにしてフットパスを散歩すると、いやおうなしに、人間が一生かかって踏みつける分量の羊のフンを踏んでしまうことになります。あまりにもそこらじゅうにこまかく散らばっているので、避けようがないのです!

羊や牛の放牧地の中を抜けるフットパスを歩いていると、ときどき胸までの高さの小さな木戸にぶつかります。これは飼っている羊や牛が通り抜けないようにするため。木戸を開けた人間は、きちんと閉めてから去るのがマナーです。

070323kawag1.jpgこの木戸に、小さな金属のプレートが打ちつけられているものを見かけました。プレートには「ジェーンの想い出に」とか「John Smith, 1900-1972」などとプライベートなメモリアルが刻まれていて、通りすがりの旅行者の想像をかきたてるのです。

先日、日比谷公園のベンチの背もたれに、よく似たものをみつけました。名前と日付だけを刻んだシンプルなプレートがあると思えば、依頼者の愛情が伝わってくるプレートもあり、眺めているとおもしろいものです。

  ○○から東京に嫁ぎ、六女]年の思い出に。
  静尾さんへ。生誕百年記念。子供一同

これは母親が百歳を迎えたことを祝って、子ども(といっても70代になっているのでしょうが……)たちが贈ったのでしょうか。かりに自分がこのプレートに刻むとしたら、どんなことばを選ぼうかしらと、あれこれ考えて楽しみました。

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2007年03月17日(土曜日)

梅舎茶館(池袋)

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070318kawag2.jpgもう何年も前からずっと、池袋に良い中国茶カフェがありますよと繰り返し聞いていたのに、池袋という街にあまりご縁がないこともあって行きそびれていました。それが梅舎茶館です。小さなお店ではあるけれど、数多い品揃えの中国茶がきちんとおいしくて、台湾の茶芸館さながらのひねもすのたりのたりした時間が流れており、なにより女性店主のヨーダさんのお人柄がとてもあたたかくて楽しいのだと。

3月、東京都心に遅い初雪が舞った翌日。 池袋のジュンク堂書店で本の探しものをしたあと、裏手に梅舎茶館があるはずだということを思い出し、連れとふたりで足をのばしてみました。お店の看板はすぐに見つかりました。たぶんこの日こそ、私が梅舎茶館と出会うべきタイミングだったのでしょう。その理由はあとでわかりました。

店内にはたくさんの茶器や茶缶、鳥かご、なにに使うのかわからない置物など、いかにも中国を感じさせる可愛さと不思議さが交錯した雑貨たちがあふれています。なかでも私の目は、窓辺のカウンターのすみに並べてあった「人間の足」と「豚の頭」に釘付けになりました。なぜ豚の頭? なぜ、足? おまけになぜ、甲の上に黒い虫が?

070318kawag1.jpgヨーダさんにうかがって、それらが立派な中国茶グッズであることが判明しました。盤の上にこの足を置いて上からお湯を注ぐと、かかとの部分にあいた小さな2つの穴から水が飛び出すのだそう。そのささやかな趣向を眺めて楽しむというわけですね。ずいぶん凝ったことを考えるものです。

「でも、なぜ虫がついてるんですか? これはキリギリスかコオロギ?」
「そうですね、鳴く虫だと思います。たぶん中国語にすると、虫と水とで縁起の良い言葉の語呂合わせになるんじゃないかと思います」

なるほど! 台湾お茶旅行をしたとき、人々がそのような縁起にびっくりするほどこだわるのを実感したことがありますから、納得のいく説明でした。可愛いのか怖いのかわからない豚の頭も同様にして使い、なんと豚の鼻の穴から水が出るのだそうです。中国では豚はたいへん縁起の良い動物とされているのですよね。

ヨーダさんはこの話をもっときちんと正確に説明してくださったのですが、私はそのあとのお話にちょっとどきどきしたせいで、ディテールが頭から抜け落ちてしまいました。お店の入口でたくさんのフラワーエッセンスを目にして、なぜ中国茶カフェにそのようなものがあるのですかと訊ねたら、ヨーダさんがセドナを訪れた際にインスピレーションを感じたとのこと。私も2月に行ってきたばかりのセドナの赤い岩山を思い出し、今日の出会いはセドナのご縁かしらと思ったのでした。

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2007年03月11日(日曜日)

ホラリー占星術~宇宙への質問

東京カフェマニア主宰 川口葉子

070310kawag.jpg占星術に興味のあるかたなら、1年に数回起きる水星のレトログレード(逆行)期間というものをご存知かもしれませんね。今年の2月から3月上旬にかけても水星の逆行があったばかりですが、この期間はコミュニケーションのすれ違いが起こりやすく、情報が混乱し、ものごとが停滞しがちとされています。

どういうわけか、私はこの水星の逆行というものの影響を受けやすいようで、なんだか小さな噛み合わせがずれてものごとがスムーズに運ばないな、と感じはじめると、天空では水星が逆行に入っていることが多いのです。逆行期間中は、まるでプールの中に立ち、両腕で水をかいて走ろうとしているような重たさ。そして逆行が終わると、おもしろいようにすっきりとものごとが動き始めます。

そんなわけで、天体の動きから宇宙の法則を読み解こうとする占星術には以前から関心を寄せてきたのですが、ひょんなご縁があって、信頼のおける占星鑑定をしてくれると評判の高い「星*花日記」のtriple-nuts-chocolateさんにメールで個人鑑定をしていただくことになりました。

ひとくちに占星術といってもさまざまな手法がありますが、triple-nuts-chocolateさんの手法は、噂に聞くホラリー占星術と誕生日のチャートを組み合わせたもの。日本ではまだあまりなじみのないこの高度な占星術は、別名「時間占星学」と呼ばれ、ピンポイントな問いにも高解像度のシャープな回答を得られるのが特徴です。

triple-nuts-chocolateさんご自身の言葉によれば「ホラリーは、特定の問題が投げかけられた時間でホロスコープを作成して占うものです。私は、シェイクスピアの時代の古い方法を下敷きに、その後独自の観点も交え、今のような感じになってきています。ご質問者さまとのやりとりや、ご依頼事項、私の技量の限界、、などによって使うテクニックは変わります」

彼女を通して宇宙の星々にアドバイスを求めたかったのは、最近浮かんできた仕事上の迷いでした。宇宙に向かって質問するときには、質問内容がクリアであればあるほどいいようです。メールで何度かやりとりをして彼女から投げかけられた簡単な質問に答えていくうちに、自然に心の中で揺れている迷いの本質を自分でも確認することになりました。私が本当に宇宙にたずねたいことは何? 

だから、届いた鑑定結果の最初のページに「私の占いは生年月日のデータだけではなく、ご依頼者さまが星に問いかけようとする力を必要とします」と書かれてあるのを見て深く納得したのです。

続くページに書かれていたことは、ひとつひとつが、思わず眉がつりあがるほど、その通りでした。そのメッセージは的確で客観的なものですが、同時に私の迷いをあたたかく優しく包み込んでくれるtriple-nuts-chocolateさんの世界観も伝わってきて、読み終えたときには大きな勇気と希望を手にしていました。問題はあいかわらずそこにあるのに、なんとすっきり晴れやかな気持ちになれたことでしょう。感謝せずにはいられません。

事前のメールの中で、私は具体的な質問といっしょに、最終的にたどりつきたい漠然とした夢も書き添えていたのですが、鑑定の最後のほうにはその夢に対してこんな嬉しい言葉が書かれていました。

「変化をしみじみと実感できるのは、もっとずっと後のことになるでしょう。でも、そのプロセスは素晴らしいものです。形に見えないからといって、しょせん夢の世界なんだ、空想して遊んでいるんだと決めつけて蔑んではいけません。
占星術的な解説が多くて恐縮なんですけど、いちおう根拠を申し上げましょうね。その夢みたいな世界に、ドラゴンと幸運のパーツがダブルでいます。祝福されていますよ。
この導きの星(水星です)は文筆の星でもあると同時にmediumship、2つの要素の橋渡しをする、伝える、という性質を浮オます」

遠くのほうにそんなサインが待ち受けていてくれるなら、水星の導きのもとで、ときおり逆行に悩まされながらも鼻歌をうたいながら歩いていこうではありませんか。

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