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2005年12月02日(金曜日)

フランス人、クロワッサンを希望

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051202kawag2.jpg「漂流の末に発見されたフランス人、クロワッサンを希望」という見出しのついた記事を読んで、なるほどフランス人!と思った人は多いことでしょう。

ボートのエンジン故障によってカリブ海を20日間漂流したフランス人漁師が、救助されたときに真っ先に頼んだのはクロワッサンだったのだそうです。漁師は「雨水とデッキに着地したわずかなトビウオによって生き延びた」ようですが、オランダの小型快速船のクルーに救助されて、最初に口にした言葉は、

「パン・オ・ショコラ(チョコレートクロワッサン)とミルクはありますか?」

だったそうです。こんなときすぐに、自分なら何を食べたがるかしらと考えるのは、根がひまなせいでしょうか。まろやかな自然塩だけで握って海苔を巻いた、ほんのりと温度のあるおにぎり。玉ネギ、じゃがいも、若布を入れたお味噌汁を少し。きっとそんなものを切望することでしょう。

今年の早春、ふだん山歩きをしたこともないのにどうしても熊野古道をひとりで歩いてみたくて、周囲のみんなに厳重な防寒具の準備と事前のトレーニングをアドバイスされていたとき、すばらしいお料理の才狽ノ恵まれた友人が作って私に持たせてくれたのは、チョコレートのあらゆる魅力をぎゅうっと濃縮して詰め込んだ究極のブラウニーでした。

051202kawag.jpg初めて歩く熊野の山々。冷たい空気は澄みきって張りつめ、何百年も昔から無数の人々が歩いてきた古道は、私のほかには人影もありませんでした。何日分もたまった筋肉痛や心ぼそさと闘いながら苔むした石畳をのぼっていくとき、背中のリュックに入れたブラウニーは頼もしいお守りになってくれました。

その日の予定ウ事に歩き終えて、山のふもとで食べるブラウニーの感動的なおいしさ。クーベルチュールをたっぷり使った、ずっしり濃厚な舌ざわり。甘さの中に、カカオの高貴なほろ苦さと、オレンジの爽やかなほろ苦さが混じり合い、ひとくちかじるごとに、疲れた身体の頭のてっぺんから爪先まで大きな喜びが駆けめぐりました。

遭難ブラウニー。私はひそかに彼女のブラウニーをそう呼んでいます。「遭難しても1個で1週間は生きられるくらいおいしいブラウニー」の略です。本当においしいものには、輝くような生命力が宿っていますものね。

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2005年11月24日(木曜日)

漆塗りの冥界へ降りてゆく

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051125kawag1.jpg200年の歴史を有する銭湯を改装した現代美術ギャラリー「SCAI」で、アニッシュ・カプーアの個展「JAPANESE MIRRORS」を見てきました。

ギャラリーで「見る」という行為そのものをこれほど純粋に楽しみ、正真正銘の眩暈に襲われたのは初めての体験でした。作品を深々とのぞきこんでいるうちに目の焦点が合わなくなり、遠近感も奪われて、非現実的な無重力空間に立っているような錯覚にとらわれるのです。

壁面に展示された作品は5つ。大きなパラボラ状のそれは漆塗りで仕上げられています。一見、巨大な漆の酒盃が白壁に飾られているようにも見えますが、近寄るにつれ、一歩ごとにそれは紛れもなくタイトル通りの「鏡」へと不可思議な変貌を遂げていきました。

051125kawag2.jpg漆塗りのパラボラの楓ハは、ぬめりのある光沢を持つ大きな鏡となって周囲の空間を映し出しています。輝くガラスの鏡が光を反射するのとは異なり、漆の鏡は光を吸収しているよう。そしてパラボラのゆるやかなカーブは、くもりのない鏡面界を無限の迷宮に変えていました。

正面から歩み寄ると、鏡の中の天地は反転して見えます。私の姿も上下さかさまに映っています。さらに歩み寄るうちに、鏡の中の自分の顔が歪みながら鏡面いっぱいに巨大化し、ふっと何もかもが虚空に溶解したと思った次の瞬間、私は正常な天地に着地して鏡の中に立っているのです。それなのに背後の世界はあいかわらず天地反転。前景の大きな私と、背景の小さな宇宙とは、見慣れた地上の法則に支配されない異次元へと漂い始めてしまうのです。

漆の色はそれぞれ「ASAGI」「KUSA」「KON」「TAMEKURO」「MURASAKI」。どの色も非常に深く、それぞれが闇のよう。浅葱色の闇、草色の闇、濃紺の闇…。

草色の闇の楓ハには幽かな波紋がひろがり、私は不意に闇に吸い込まれて、死後、最初に出会う風景の中に(もし、そのようなものがあるとすれば)佇んでいました。この世と死後の世界の間を隔てる、果てのない薄暮の風景の中に。

亡くなった恋人を再び甦らせるために冥府へと降りていく人間の物語は世界中の神話や伝説に見つけることができますが、そのとき私はまるで、亡霊となった恋人を後ろに従え、地上に戻るまでは決して後ろを振り向いてはいけないと命じられて冥界をさまよい歩く人間であるかのように感じていました。

051125kawag3.jpg身体がぐらりと揺れて、私は地上に戻りました。それでもまだ遠近感は失われたままらしく、思わず手を伸ばして鏡の最奥、いちばんくぼんだ部分に触れて距離を確認せずにはいられません。けれども手は、何にも触れはしませんでした。実際の鏡は、視覚がとらえるよりもずっと遠くにあったのです。

眩暈に襲われてあとずさった一瞬、私の姿がかき消えました。カーブする鏡面には背後の空間が映っているのに、自分の姿はどこにも見あたりません。本当に肉体が消滅し、霊魂だけの存在となってしまったように。

鏡は同時にパラボラアンテナでもあります。いったい何を受信しているのでしょう。閉館まぎわの誰もいないギャラリーで、私はどれだけの時間、魂を吸い取られたまま深淵をのぞいていたでしょうか。

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2005年11月18日(金曜日)

朝のご苦労さま

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051118kawag01.jpg今週は12月なみに冷え込みましたね。朝、部屋の中で靴下を履いていても爪先が冷たく感じられます。

私は寒がりの子どもでした。大人になっても相変わらず寒がりですが、子どもの頃、冬は今よりもずっと寒かったのです。

毎朝、大きなテーブルには背広姿の父とセーラー服の私が並び、まだ半分眠っている顔で朝食をとります。母は石油ストーブを父と私のすぐ背中に近寄せ、自分は冷えびえとした台所に立って私のためにお弁当を作っていました。母がドアを開けてリビングに入ってくるたびに、台所の冷気が流れ込んできます。私はストーブの熱をたっぷりとセーラー服の背中に浴びてもなお寒がりながら、お母さんは偉いなあ、ご苦労さま、と思っていました。

それがいつのまにか、夫に対して、母と同じことをするようになっていました。夫も私も働いていた時代には、朝はふたりとも1分を争う騒ぎで家を飛び出していきますから、寒いなどと言っている余裕もなかったのですが、私が会社を辞めて家でのんびり仕事をするようになると、いとも自然に、外の寒さの中に出かけていく夫をあたためなくてはと思うようになっていたのです。

もっとも、現在では気密性の高いマンションで暮らしているうえに、強力なエアコンディショナーのおかげで部屋はたちまち暖かくなりますが、とにかく出勤前の夫をできるだけあたためたいのです。木枯らしの中を仕事に出かけていくのだもの。偉いなあ、ご苦労さま。そう思うと、たとえ短い時間でもおなかの底からしっかりとあたたまってほしくて、無理やりにでも熱いコーヒーとトーストを夫のおなかに入れてしまいます。

あの頃の母も、出かけていく父と私に対して、ご苦労さま、せめて朝食のテーブルではあったまってねと思っていたのかもしれません。自分がその立場になって初めてわかったのは、それが優しさとか思いやりなどとあらためて名づける行為ではなくて、もう無意識にしてしまう行為だということ。

違いと言えば、母は毎朝欠かさずに父と私をあたためてくれましたが、私は二日に一度は、ベッドの中でぬくぬくしながら行ってらっしゃいと声だけで夫を見送っていることでしょうか…。

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2005年11月11日(金曜日)

画家と自家焙煎珈琲の関係

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051111kawag1.jpg人気の自家焙煎珈琲職人、中川ワニさんのご本業は画家です。また、カフェ好きの人のあいだでよく知られる美しいカフェ、札幌の「森彦」のオーナー・市川草介さんは、ご自宅でコーヒーの焙煎をしていますが、本業はグラフィックデザイナー。

その市川さんに「焙煎を始める決心をさせてくれたお店」として教えていただいたのは、札幌の繁華街から離れた、月寒(つきさむ)という風情ある名前の町にある「トミー館」という小さな自家焙煎珈琲店でした。トミーとはもちろん、珈琲店とジャズの切っても切り離せない関係により、ジャズピアニストのトミー・フラナガンのこと。

気難しいご主人を想像していましたが、カウンターごしにお話ししてみると語り口はあくまでも柔らか。それでいて、思わずはっとして居ずまいを正すような言葉がこぼれてくるのです。休日には山登りと写真と旅行、とご主人は語ります。

「ときどき、自分を旅に連れていきます。それはコーヒーを淹れ続けるうえで必要なことなのです。旅先で初めて出会うコーヒーがありますね。もしそのコーヒーのおいしさに感動したら、その新しい味に負けないようますます努力しなくてはと思いますし、まずいコーヒーに出会えたら、早く帰って自分で納得のいくコーヒーを淹れたいと思えますから」

051111kawag2.jpgご主人に珈琲店を始めたきっかけを尋ねると、もともとはグラフィックデザイナーを目指して絵の専門学校に進んだ、とおっしゃるではありませんか。いったい、絵画を描くことと自家焙煎珈琲にはどういう関係があるのでしょうか?

「たしかに、絵を描くこととコーヒーの焙煎には通じるものがあるかもしれませんね」
と、森彦のオーナー市川さん。
「どちらも<創作>ですし、同じものを量産できないから」

絵を描くことを断念したかわりに写真を撮っているトミー館の中島さんは、
「何をどう切り取って表現するか。それが写真とコーヒーの焙煎との共通点かな」
と話してくれました。
「花を撮りたいのか、山を撮りたいのかで、告}を変えますね。それはその瞬間、瞬間で決めていかないと、人にきちんと伝わるものができない」

さて、その中島さんのもとには、彼の淹れるコーヒーを飲むためだけに、東京からはるばる日帰りで飛行機に乗ってやってくる常連さんがいます。その人が何の仕事をしているのか聞いてみました。
「ええと、現在は何をしていたかな。以前は画家でした」

…ここでもまた、画家が!

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2005年11月04日(金曜日)

喫茶店の喜び・作り手の場合

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051104kawag2.jpg札幌へ、コーヒーをめぐる旅に出かけました。北の国の喫茶店はどこもコーヒーがおいしい。カップから立ちのぼるほのかな湯気で少し心をあたためる、そんな場所がたくさんあります。

時計台の裏にある喫茶店「北地蔵」は、カフェ好きにはよく知られたお店です。一度聞いたら忘れられない名前、誰もが語る落ちついた佇まいの魅力。東京を発つ前から、北地蔵には必ず立ち寄ろうと心に決めていました。

午前の静かな北地蔵の店内にはお客さまが3人。いずれもひとりで訪れた初老の女性ばかりで、それぞれがカウンターの上に本をひろげていました。ひっそりと、良い時間の匂いがたちこめています。私もその中に混じって、白地に薄青い梅の花が描かれたカップでコーヒーをいただきました。

そのふくよかな時間の印象が忘れられず、2日後、札幌を去る前に再び北地蔵を訪れました。

051104kawag1.jpg「お地蔵さんのような店になりたい。なれるはずがないのですが、だからこそよけいに。そんな意味を込めた店名です」
オーナーはそう言いました。もう30年ばかり続いている喫茶店ですが、「長い歴史の中で、嬉しかったことは何ですか」と尋ねると、意外な答えが返ってきました。

「ひょんなことがあるのが嬉しいですね。暖簾(のれん)に描かれた道祖神に会ったりね」

北地蔵の店内で、実際にお地蔵さまがデザインされているのは暖簾だけです。その暖簾のデザインのもとになったのは、どこにあるともわからない道祖神の写真だったのだそうです。

「ひょんなことから、先日、その道祖神が長野の真田村に立っていることがわかりましてね。私は長野が大好きで、友人たちも長野にいるし、私の結婚式も長野で挙げたんです。不思議なご縁を感じました」

オーナーはその道祖神に会うために真田村に出かけ、小さな像のまわりの清掃をして、花を供えてきたそうです。

何十年もの間、朝の決まった時間にお店のシャッターを開け、一日じゅうお客さまのためにコーヒーをたて、パンを焼き、夜、お店を閉める。淡々と積み重なっていくそんな毎日を支えるもののひとつは、ときどき小鳥のように飛んできて、思いがけない喜びを与えてくれる「ひょんなこと」なのですね。

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2005年10月28日(金曜日)

百の誓いを立てて

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051028kawag.jpg肩こり改善のために、月に何度か横浜まで気功を受けに行きます。気功と聞くとなんだかうさんくさく思う人もいるでしょう。実は私も半信半疑で受けているのですが、横になっている私に先生が気を送ると、不思議なことに両手両足がぴりぴりとしびれたり、ふわりと温かくなったりします。

TVで見かける気功では、眉間にしわを寄せて「はっ!」などと気合いを入れたり、瞑想状態に入ったりするようですが、先生はいたって気楽に冗談を連発しながらやっていらっしゃいます。先生、もうちょっとまじめに気に集中してください、と言いたくなることもありますが、そのような集中と気は、どうやらあまり関係がないようです。

先生はときどきおもしろい話を聞かせてくれます。「調子はいかがですか?」と尋ねられて、「体調はいいのですが、精神的には、怠け者の自分を情けなく思っています」と答えたときのこと。

「私たちはこの世に誕生するとき、どうしてもこの地球上に生まれたいと願って、100年も200年もチャンスを待つのだそうですよ。生まれたくて生まれたくて、山ほど誓いを立てて、両親となる人を選んで、やっと生まれてくるんだとか」

ふと、よく晴れた夏の日にベランダで読書していたとき、私は生まれたくて生まれたくて、この世に生まれてきたのだと、何の根拠もなしに感じたことを思い出しました。

「そのくせ、いざ人間として人生を歩き始めると、自分がどれほど一生懸命に『生まれたらこんなふうに生きます』と誓ったか、きれいさっぱり忘れてしまうんです」と先生。そんな大切な誓いをなぜ忘れてしまうのでしょうね、と尋ねてみました。

「それはきっと、自分の力で見出さなければ意味がないからでしょう。回答つきの問題集を持って生まれてきたら、おもしろいですか?」
「私、きっとズルして最初に答えを全部見てしまいます」
「そうでしょう(笑) それじゃあ全然勉強になりませんからね」

百もの誓いを立て、生まれたいと心から願ってこの世にやって来たのだとしたら、どれほど自分がつまらないことばかりしているとしても、「私はなぜこんなところでこんなことをしているのだろう?」と疑問を抱くばかりだとしても、今、ここでこうして生きているのは本望なのですよね。

とりあえず、生きて呼吸をしているだけで幸運。そんなふうに考えたら、心が軽くなりました。青空が気持ちいいと感じている時間も、私ってなんて情けないのだろうと思っている時間も、みな等しく金銀に輝いているようです。

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2005年10月21日(金曜日)

横浜のオープンカフェ

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051021kawag1.jpg横浜の山下公園近く、海に向かって伸びる美しい並木道「日本大通り」では、横浜市によるオープンカフェの実験がおこなわれています。

明治時代に設計された街路の両脇には歴史を重ねてきた洋館とイチョウの樹が並び、気持ちのいい広い舗道がまっすぐに続いています。その通りに面したお店が、広い舗道にそれぞれのパラャ汲ミろげているのです。

どのお店も、パラャ汲ュ落た四角い形に統一。日本初登場のこのパラャ汲ヘ、風の影響を吸収するように設計され、まるで鳥かごのように上から吊られています。
…とはいえ、風の強い日や雨の日は、やっぱりお休みになってしまうのですって。風雨にさらされ、歯を食いしばってまで屋外でコーヒーを飲みたいとは誰も思いませんものね。

051021kawag2.jpgアルテリーベの前の舗道には、パリの街角の風景そのままの籐椅子とギャルャ刀Bデザイン集団grafが出店したgraf media gm:Yokohamaの奥には、舗道に面した入り口からは想像もできない広々とした空間に、草間恊カとgrafがデザインしたソファが並んでいます。

この水曜日、銀杏を拾う人々を見かける午後に、アルテリーベのテラス席でお茶を楽しみました。空の下、緑を眺めながら飲んだり食べたりすると、2倍おいしく感じることにはみんな気がついています。ちょっと暑い日もちょっと寒い日も、まずオープンテラス席から椅子が埋まっていくのですって。

▼日本大通りスペシャルサイト

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2005年10月14日(金曜日)

決して代用品ではなく

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051014kawag.jpg表参道のBROWN RICE CAFEは、おいしいものを通してライフスタイルから地球環境まで、WHOLE=”まるごと”提案するお店。
ホールフードという考え方を、肩をいからせず柔らかな口調で語りかけながら、しっかりと芯の通った姿勢をすみずみまで貫いていて、目の前が明るくなるような魅力を感じます。

このカフェに関わるスタッフは、お店で扱う安全な野菜や調味料を選ぶために、わざわざ全国の生産者のところまで出向いて何度もじっくりと話し合いを持ち、おたがいに心から信頼できるかどうかを確認しているのです。農家の人といっしょに田植えをしたり、味噌を仕込んだりもしているというから驚きです。
カフェで使われる林檎ひとつ、タマゴひとつをとっても、丹精こめてそれを育てている人々の顔と、それぞれの持つ物語とが豊かにたちのぼってきます。

BROWN RICE CAFEの工房でナチュラルスイーツを手作りしているスタッフに、お話をうかがったことがあります。ここでは、バターや牛乳、クリームなどの動物性食品や砂糖は使いません。全粒粉のスコーンに添えられたほんのり白いクリームは、豆腐で作られていました。その<ャCクリーム>のおいしさに目をみはった私に、スタッフは笑顔で話してくれました。

051014kawag2.jpg「お豆腐で作ったクリームは、生クリーム<もどき>の代用品と思われがちですよね? でも、私は決して代用品とはとらえていません。お豆腐にはこんな新しいおいしさがあるんだということを、召し上がった人に発見して楽しんでいただきたいのです。私たちが作るスイーツはみな、<もどき>ではなくて主役だと思っています」

そこには、本当は生クリームを食べたいのだけれど健康が心配だからがまんする、という発想がありません。おいしいからャCクリームを選ぶ。それが身体にもやさしい。やせがまんなど必要ないのです。なんて痛快な!

また、バイオダイナミクス農法で育てた葡萄を用いて添加物を一切加えずに作るワインは、きりりと引き締まったおいしさで和食によく合い、「思わず1人で1本飲んでしまっても、翌朝まったく残らないのです」というではありませんか。まさに大地と天の恵み!

今朝ちょっとばかり二日酔い気味だった私は、来月からカフェのメニューに登場するというこのワインが待ち遠しくてたまりません。

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2005年10月07日(金曜日)

ecute品川にて、メープルシロップづくし

東京カフェマニア主宰 川口葉子

051007kawag2.jpg10月1日、JR品川駅の酷烽ノecute品川(エキュートしながわ)がオープンしました。これが改札口の中?と目を見はるようなさまざまなショップの集合体。スイーツのお店、デリカフェ、アロマサロンなどが色とりどりの光を放ち、人々を引き寄せています。

そのなかのひとつ、「QBG ル パティシエ タカギ」をのぞいてみました。ショーケースには、おなじみル・パティシエ タカギの高木康政氏と、ナチュラルスイートメーカーQBG(クインビーガーデン)のコラボレーションによるスイーツが並んでいます。

こちらのお菓子は身体に優しいメープルシロップとはちみつがテーマ。ショップの奥にテラス席が設けられ、小さなイートインスペースになっているのを見つけて、あいにくの小雨ではありましたがケーキをひとつ食べていくことにしました。

051007kawag1.jpg選んだのは、濡れたようにしっとり光るクリームに包まれたメープルショートケーキ。その形はいちご色の炎をともしたロウソクを思わせます。

カウンターでドリンクを注文してからテラス席に座ると、スタッフがケーキ、コーヒーといっしょにメープルシロップの瓶を運んできました。
「コーヒーにはメープルシロップを入れてお召し上がりください」

なるほど、ここではお砂糖というものを使わないのですね。フォークを入れた生地にもメープルシロップの懐かしく素朴な甘さがしみこんでいました。

このスイーツタイムのおかげで待ち合わせに10分遅刻してしまいましたが、電車乗り換えのために降りた品川駅のホームで、気がつけば30分も楽しんでいたという人たちが続出しているのではないでしょうか。

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2005年09月30日(金曜日)

夫婦というもの

東京カフェマニア主宰 川口葉子

050930kawag.jpg私は誰かが夫を傷つけたりしたら許さないと思っています。こころねの優しい彼は、どんなときでも相手が悲しむような言葉を決して口にしないのです。そんな人間の常として、ほかの人の無神経な言動が針のように心に刺さってしまいがち。彼が優しいように、世界も彼に対して優しくあってほしいと願わずにはいられません。

そのくせ私は、自分だけはどんなに夫を傷つけてもいいと無意識のうちに考えているのです。だんだん後頭部の髪があやしくなってきた彼にむかって、つい言ってしまいました。
「つむじが、気象衛星から見た巨大ハリケーンにそっくり!」
「このハリケーン、時速何キロで北上するのかしらね?」

世界でいちばん残酷なのは妻だと、彼には思われていることでしょう。

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