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2005年01月26日(水曜日)

夜のミッキー・マウス

東京カフェマニア主宰 川口葉子

2003年に出版された谷川俊太郎の詩集『夜のミッキー・マウス』。表題作はこんなふうに始まります。

夜のミッキー・マウスは
昼間より難解だ
ユーモラスな中に薄気味悪さが漂っている詩。見慣れた明るいモノたちの隠された夜の表情を盗み見てしまった、そんな気分になっているとき、愛読しているサイトからメールマガジンが届きました。そのなかに、読者からのこんなメールが紹介されていました。
35年間生きてきて、しみじみわかったことは
食パンは夜食べるのがいちばんおいしいということです。
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…そ、そうですか? よくわからないままに、この言葉に奇妙な説得力を感じてしまいました。この人はどんな情況で夜に食パンを食べたのでしょうか? 場所はおそらく自宅ですよね。一人で? 家族と? 恋人と? 夕食に? 真夜中に? 10通りもの想像がひろがりました。

もっともしっくりなじむシチュエーションは、眠れない夜に一人、トーストした食パンにバターだけ塗ってキッチンのすみのテーブルで食べている光景。しんみりとおいしいのではないかしら。

ものずきにも、試してみました。夫が眠った真夜中にごそごそと起きだし、焼き網を直火にかけて厚切りの食パンをのせました。トーストはこうして焼くのがいちばんおいしく作れるのです。表面はこんがり、中はふっくらしっとり、手でちぎると白い肌からいい匂いの湯気があがって。

深夜、キッチンに立って見つめる食パンは、なにか見たこともない不可解な物体に変貌していました。それは焼き網の上にひっそりと白い疑問符のように横たわり、やわらかな肌に夜の気配を吸い込んでいます。


夜の食パンは
昼間より難解だ
そんなふうに谷川俊太郎のアレンジが浮かんだついでに、ふと彼の若い頃の有名な詩集を思い出しました。『夜中に台所で僕は君に話しかけたかった』。しんとした夜のキッチンには不思議な気配がひそんでいて、食パンにも力を及ぼしているのです。

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2005年01月19日(水曜日)

手相カフェでお茶を一杯

東京カフェマニア主宰 川口葉子

あの占い師は当たる、当たるだけじゃなくて元気になれると友人たちが口をそろえて賞賛するので、笹塚のカフェに予約をして出かけてみました。週に2回、手相カウンセラーの女性を招いて「手相カフェ」が行われているのです。

占いは愉快なお遊び。参考にはするけれど、決めるのは自分。私はそんなふうに占いとのおつきあい方法を決めています。どんなばかな選択もできるのが人間の特権だと思うので、最終的にどうするかを選ぶのは自分でありたいのです。

まあ、すべてを自分でコントロールしたいという人には占いは必要ないのでしょうが、未来は思いもよらないハプニングに満ちているもの。自分の頭で考えられる範囲外のことについて、星の動きや手のひらを読んでアドバイスをもらうと、生活がカラフルで楽しくなりますよね。

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笹塚のカフェはこじんまりと落ち着いた空間でした。壁にはポットとカップを刺繍したティーナフキンが額装して飾られています。「お値段に関係なく、お好きなものをご注文ください」と渡されたお茶のメニューには、中国茶、台湾茶、韓国茶がずらり。その中から、台湾の無農薬凍頂烏龍茶「翠玉」をいただくことにしました。

手相カウンセラーWさんは、噂にたがわず的確な言葉を次々に発していきます。わかるようなわからないような抽象的な答えではなく、はっきりと具体的であたたかいアドバイスをしてくれるので、痛快ですらあります。初対面なのになぜそんなことまで見抜いてしまうの?と驚いたのですが、手相だけではなく、生来の霊感を駆使して私の情報を読み取っているようでした。

私は目下とりたてて大きな問題は抱えていないので、旅行先としてアラスカとアイルランドのどちらがいいか尋ねたりして素敵な答えをもらったのですが、次の相談者はちょっと真剣な恋愛相談で(ごめんなさい、聞くつもりはなかったのだけれど聞こえてしまったのです)、こちらまで思わずうなってしまうような見事なアドバイスを受け取っていました。あの人は本当に目の前の霧が晴れて勇気が出ただろうな。

ちなみに、私の背後にくっついている、目に見えない「ガイド」と呼ばれる存在は、旅館か料亭のにこにこした女将さんだそうです。それを聞いて大笑いしてしまいました。どうりで私が食いしん坊の旅行好きになっちゃうはずですよね?!

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2005年01月12日(水曜日)

烏龍茶ゼリー

東京カフェマニア主宰 川口葉子

050112kawag.jpg日頃から落ちついた人なのに、なぜかしょっちゅう忘れ物。落ちつきはらって歩いていて、見事にころぶ。世の中には矛盾を抱えた人間が少なくないもので、残念ながら私もそんな一人。今年こそはうっかり者を卒業しようと、<5分間深呼吸>にトライしています。

ゆっくり8つカウントしながら鼻から息を吐いて、また8つカウントしながら鼻から息を吸う。2つ息をとめる。その繰り返しです。シンプルですが、集中して5分間続けるのは意外に難しいもの。1分もたたないうちに気が散ってしまって自分でもあきれるほど。でも、うまく集中できたあとは、酸素と光の滝を浴びたようにさわやかです。

年明け初の中国茶、皆さまはどんなお茶を楽しまれたのでしょうか。私はちょっと趣向を変えて烏龍茶ゼリーなど作ってみました。

(1) 濃いめに淹れた烏龍茶に粉ゼラチンを加え、ワイングラスに入れて冷蔵庫で冷やします。
(2) ぷるぷるに固まったら、生クリームとミントの葉をトッピング。

…と、これだけで完成してしまうスイーツです。

もう少しきっちりしたレシピでは桂花陳酒(キンモクセイのお酒)とお砂糖を加えて甘くまろやかに作るのですが、いつの間にか桂花陳酒を全部飲んでしまっていて、いざ使おうと思ったら瓶がからっぽ。いさぎよく烏龍茶のみで作りました。

これが意外にすっきり、さっぱりした喉ごしで、油分とカロリーの多い食事をしたあとにぴったりでした。デザートだけはカロリーをセーブしました、という気やすめにもなって、精神衛生にも大変よろしいスイーツです。

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2004年12月29日(水曜日)

コーヒー&シガレッツ

東京カフェマニア主宰 川口葉子

041229kawag.jpgジム・ジャームッシュ監督の『コーヒー&シガレッツ』の試写を観てきました。ジャームッシュが18年もの長きに渡って撮りためてきたという11本のショートストーリー集。第1話「変な出会い」から第11話「シャンパン」まで、舞台はいずれもどこかの街角のぱっとしないカフェです。

登場するのはジャームッシュ作品の常連、“酔いどれ詩人”ことトム・ウェイツをはじめ、イギー・ポップ、メグ&ジャック・ホワイトなど素晴らしいクセモノの面々。彼らは誰かと待ち合わせをしたり、呼び止められたりして、カフェのテーブルにつきます。

向かい合う二人の会話は、とてもぎこちない。どちらも相手に優しくしたい、心を触れ合わせたいと願っているのに、不器用なものだから話がうまく噛みあいません。奇妙な沈黙が流れ、間がもたなくて、いたたまれない。

「なんでこんなふうになっちゃうんだろう? オレはコイツともう少し親しくなりたいだけなのに、どうしてうまくいかないんだろう?」
=彼らの内心のそんなぼやきが聞こえてくるようです。最後にはどちらかが、ほとんど逃げるようにしてカフェを出ていきます。

あるいは、紙コップ入りのコーヒーで休憩する二人の老人。自分が世界に取り残されてしまったような気がする、と言いながらも老人は提案します。
「このコーヒーをシャンパンだと思おうじゃないか」
「なぜ?」
「人生を祝うためさ」
彼にとって、過ぎた日々は甘かったのか苦かったのか。とにかく世界にカフェインとニコチンが存在していてよかった、ありがとうカフェイン、という乾杯かもしれません。

情けない登場人物たちに共感をおぼえずにはいられません。小さな優しさがすれ違うばかりの気まずいお茶の時間が、なんといとおしく思えることでしょう。なぜなら、彼らの姿は私の姿でもあるから。

人類と他の動物との違いは、「ヒト科は喫茶する」ことにあるのではないかしら、などと思いながらお茶をすする年末でした。今年もおいしい喫茶生活が過ごせてよかった。また来年、あなたにも私にも良い喫茶時間がたっぷりありますように。

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2004年12月22日(水曜日)

天使がチャイムを鳴らすとき

東京カフェマニア主宰 川口葉子

数年ぶりに会う約束をした友人と、LIFEでおいしいワインを飲みました。輝く笑顔と躍るような瞳は昔のまま。美しい友人です。

クリスマスプレゼント、と言って彼女がさし出したのはスウェーデン製のエンジェルチャイムでした。なんと子供の頃、うちにあったのと全く同じもの。ロウソクに火をともすとあたたまった空気が上昇して3人の天使を回し、その天使の胸から下がるスティックがチャイムに触れて微かな音を鳴らすのです。

かつて彼女と私は同じ会社で机を並べ、毎日のように相手の喜怒哀楽をすぐ近くに感じていました。忙しくしているのが好きな彼女と、ひまにしているのが好きな私。それぞれに会社を辞め、別の道を歩き始めてからはなかなか会う機会もなかったのですが、ある時代に集中的に時間を共有した人とは、再会したとたんに笑いの共通ポイントを思い出すものですね。ワインをたっぷり飲みながら、なんだか大笑いばかりしていました。

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ままならない大恋愛を終わらせて心身ともに自由になった彼女は、会社員時代に試行錯誤していた<天職>を自分の手でつかんでエネルギーを注ぎこみ、いきいきと活躍しているようでした。得意なこと、好きなこと、人に喜ばれて対価を払ってもらえること。この3つが一致する仕事につける人は決して多くはありませんよね。悩み続ける力、希望を失わずに小さな挑戦を積み重ねる力を持っている彼女だからこそ実現できたのでしょう。そんな力はいわば、魂の基礎体力。

いっぽうの私といえば、相変わらず本と散歩とカフェでぼんやりの日々。でもなぜかしら、誰もが同じひとつの山を別々のルートで登っているにすぎないのだと感じていました。険しいルートも単調なルートもあるけれど、いつか山頂にみんなが集合する日が来るでしょう。時には何合目かで、それぞれの道が交差することもあるでしょう。私は私が本当に知りたいことを知るために、私のルートを登っていこう。そしていつか山頂で、懐かしい人々とお互いの健闘をたたえあって乾杯しよう。そんなことを思いました。

次の晩、部屋の明かりを消して、夫にエンジェルチャイムのロウソクに火をつけてもらいました。金色の天使たちは微かな合図を響かせながら、いつまでもくるくると回り続けていました。

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2004年12月15日(水曜日)

屋上の中国茶

東京カフェマニア主宰 川口葉子

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誰でも、気分が冴えないときに自分をなだめる方法をいくつか持っていますよね。私にもいくつかの小さな気晴らし法があります。

宮澤やすみさんの日誌に「疲れがたまったときは、水辺にいきます」と書かれていましたが、私の気晴らし法のひとつもやはり水辺。水音や水面できらきらする光は、どんなかさかさした心にも潤いを与えてくれるようです。

といっても、私の場合は実際に水辺に行くのではなく、夏休みの市民プールを思い出すだけ。小学生のとき、おむかいに住む姉妹といっしょに通った市民プールの情景です。照りつける日差し。水音。子供たちの声。濡れた足跡がすぐにかわく熱いコンクリート。泳いだあと、更衣室でバスタオルにくるまりながら理由もなく激しく泣きそうになること。

…そんなことをひとつずつ、冬の部屋のなかで克明に思い描いていると、不思議に生気がよみがえってくるのです。

そして、もうひとつの気晴らし法が屋上。ひとけのない屋上にあがって、ただ空を見上げたり、街を見下ろしたりしているだけで、どうしてあんなにも、もやもやしていた胸の中にすうすうと風が通るようになるのでしょうね?

小旅行の途中で立ち寄った田舎町の一軒家のカフェには、たまらなく居心地のいい屋上テラスがありました。古い民家の二階に作られた、ほんとうに普通の屋上です。かつては花柄や縞の洗濯物などがたくさんひるがえったに違いありません。

そこでいただいたランチには中国茶がついていました。メニューには中国茶の種類が豊富で、よく見ればあちこちに工夫茶の道具などが置かれています。古いサッシの窓にも板が渡され、小さな茶壷がたくさん並んでいました。たっぷりと光が射し込む屋上で、グラスに透ける茶葉を眺めながらいただいた中国茶の、のほほんと美味しかったこと。

屋上と中国茶。あまり考えてみなかった取り合わせですが、実はたいへんな名コンビかもしれません。

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2004年12月08日(水曜日)

女子カフェ、男子カフェ

東京カフェマニア主宰 川口葉子

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カフェの中には性別のはっきりしたお店があって、私はそれぞれを「女子カフェ」「男子カフェ」と呼んでいます。

女子カフェの魅力は、こまごまとしたかわいらしい雑貨と手作りのお菓子、ほんのり頬が上気したスタッフの繊細な風情。いっぽう、男子カフェのそれは、ラフでざっくりした空気と「メシ」と、窓からしのび込んでくる街の気配。

恵比寿の五差路に小さなトラの看板をつけたカフェがあります。こじんまりした規模ながら、ゆったりした空気の流れる男子カフェ。オーナーは目黒ファニチャー通りのカフェ「ハンナ」のオープン当初から関わってきた男性です。独特のやわらかな風情のある人ですが…

「ハンナの反動で、ここはこんなカフェに(笑)」

そう、ハンナは白く輝く美しい女子カフェ。何年もそこで働いているうちに、思いきり男子っぽい空間を作ってバランスを取りたくなったようです。でも、ふたつのカフェには素敵な共通点がありました。高橋ピエール氏のボサノバライブが行われること。高橋ピエール氏の名作「ハンナヌーヴォー」のCDジャケットを描いたのは、なんとこのカフェのオーナーでした。

10年前に吉祥寺のジャズ喫茶でいっしょに働いていたという二人。カフェを舞台に生まれた友情は、お互いの環境が変わっても、あたたかく続いているようです。

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2004年12月01日(水曜日)

金魚屋珈琲店

東京カフェマニア主宰 川口葉子

金魚迷路のような下町の路地裏に、11月の週末だけ営業するカフェが忽然と現れたと聞いて、ふたりで出かけてみました。どうも普通のカフェではないらしいのです。その名も「金魚屋珈琲店」。

消防車など入れそうもない狭い路地の一角。めあての建物は、一軒家…と呼ぶに呼べないバラック小屋でした。しかし、戸口には金魚を描いたチャーミングなのれんがかかり、中から何やら楽しげな話し声がもれています。

おそるおそる扉を開けると、店内はぎっしり満員でした! だって、喫茶スペースはわずか3畳。そこに4人が座ったらもう「ひしめきあう」という感じなのです。

気さくな女性店主が「よかったら二階をご覧になっていてくださいね」と声をかけてくれたので、階段…というより、はしごに近いモノをよじのぼって二階に上がってみました。四畳半一面に、美しい布で作られた無数の金魚たちが泳いでいます。その愛嬌たっぷりの姿。

一階のお客さまたちが去ったあと、ころげ落ちやしないかとドキドキしながらはしご段をおりて、金魚サブレをいただきました。展示されている金魚グッズを買った人にはコーヒーが無料でサービスされるのです。1枚150円の金魚サブレも対象のひとつ。プレーン味、ココア味のほかにトウガラシ味もあって、ふたりで3種類とも制覇しました。

コーヒーを淹れてくれた女性店主は、布素材を用いてさまざまなものをデザインする「はるる工房」さん。この建物はいったい何なのですかと尋ねると、「ドイツ人の先生のものなんです」。先生は沖縄の大学で教えていて、東京に滞在するときだけここに泊まるのだとか。粋なドイツ人ですね。でも、先生が寝起きのたびに低い天井に頭をぶつけていやしないかと心配です。

店内は水色にペイントされた大小の消火器だらけ。
「この消火器にはどういう意味が?」
「金魚に関係する<水>をあらわしているのです。本物だから、火事になったらちゃんと使えますよ」
なるほど、と膝を打った私のとなりで連れが言いました。
「この中がひとつの大きな金魚鉢なわけですね。私たちも金魚なんだ」

そうなんですよ、と女性店主はやさしく微笑し、連れは調子にのって泳ぐまねなどしていましたが、もともと謙虚な私は「脂肪たっぷりのあなたと私は、金魚というより、古池の巨大鯉じゃない?」とコメントしたい気持ちでいっぱいでした。

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2004年11月24日(水曜日)

多摩川のほとりのピースフルなカフェ

東京カフェマニア主宰 川口葉子

041124kawag.jpg晴れた日曜日の午後、多摩川べりの散歩に出かけました。秋の終わりの河川敷では、犬を散歩させる人々や、男性を散歩させる女性たち、魚につられている釣り人たちがそれぞれの時間を楽しんでいます。

土手をおりたところに、ざっくばらんな(?)作りの白い小屋がひとつ。噂に聞いた期間限定のカフェが「PEACE」の看板を掲げ、川にむかってパラソルと椅子を並べています。そのひとつに腰をおろし、グラスのシャンパンを注文してみました。

都心のカフェとはあきらかに違う空気感です。雑踏を足早に抜けてこのカフェのドアを開けた、というせわしないムードを背負っている人はいないし、携帯電話で仕事の打ち合わせをする人もいないし、いらただしげな口調の会話も聞こえてきません。座っている人々は本当にのんびりと川を眺めてリラックスしているのです。いつもならすぐに本をひろげる私も、気持ちのいい川風を深呼吸したり空を見上げたり。

PEACEの今年の営業は11月23日で終了。小さな黒板にはこんな文字が書かれていました。


約半年間、PEACEにお越しいただいた皆様、
どうもありがとうございました。
来期OPEN予定は4月下旬です。
あたたかくなってからの皆様のご来店をお待ちしております。
See you next year!

通りかかった犬をなでさせてもらったりするうちに、早くも淡い色のシャンパンの向こうに太陽が傾き始めました。野球の試合を終えた少年たちが、ユニフォーム姿でPEACEの前を横切って帰っていきます。

ピースフルな時間が名残惜しくなって、その日の夜、再びPEACEに戻ってきて夫と二人で夕食をとりました。小さなランプに照らされたテーブルでワインを飲んでいると、なんだか不思議な気持ちになります。
「どうしてこんなに落ち着くんだろうね?」
夫が燻製の牛タンを食べながら言いました。暗い川面、遠くの橋の上を通過する電車の窓のあかり。

お店の膝掛けを借りたのですが、さすがに食べ終わる頃は身体が冷えてしまって、食後酒にホットウィスキートディを注文しました。帰るときにスタッフが笑顔で言葉を添えてくれました。
「おうちに帰ってから、ちゃんとあったまってくださいね」

その言葉に、しっかりあたたまってしまったのです。

【2007年4月以降のPEACEのショップデータなど、詳細はこちらで!】
AllAboutカフェごはん「PEACE」…二子玉川


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2004年11月17日(水曜日)

カフェ俳句

東京カフェマニア主宰 川口葉子

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趣味でカフェのWebサイトを作り始めて4年。ときどき海外の読者からメールをいただくことがあります。
先日届いたメールはUS発。CAFFEINE SOCIETY(カフェイン・ソサイエティ)という小さな出版社をおこしたJeffrey Goldsmith氏からでした。

「東京カフェマニアが大好きです。CAFE HAIKUという本を作ったので、よかったらさしあげましょう」と英語で書かれた短いメール。返信を送って数日後、カリフォルニアから1冊の本が届きました。

洒落たデザインのページをめくると、右側にはカフェインのある風景を切り取ったモノクロ写真が、左側には3行の英文が並んでいます。CAFE HAIKUとは、そう、カフェ俳句だったのです!

カプチーノをよんだ一句、空になったカップについての一句、遥かな国の味がするチョコレート・マカロンについての一句。なかには古い木の椅子を眺め、光と影の中で座るZAZEN(座禅。アメリカ人にとっては東洋の神秘?)に思いをはせた句や、カフェイン的洞察を深める句もあります。たとえばこんな三行。

Caffeine makes context.
This world radiates from you.
Mind expanding cup.

直訳するとこんな感じでしょうか。

”カフェインが情況を作る。
 この世界はあなたが放射するもの。
 想いがカップをひろげていく”

これを日本語の五・七・五のリズムに翻訳するとどうなるのでしょう? 最近はカフェインを飲むたびにカフェ俳句の日本語訳を考えて遊んでいます。

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