
2010年07月09日(金曜日)
アテネのカフェで、朝パフェするビジネスマン
東京カフェマニア主宰 川口葉子
ミコノス島~アテネ~ドバイと、9日間の旅に出かけてまいりました。
古代文明の厚い歴史が横たわるギリシャ。現代に急激な発展をとげたアラブ首長国連邦。その対比がくっきりと際立つ旅となりました。
ドバイはまるで砂漠に建つ巨大なディズニーランド。この都市にはリーマンショックでバブルが崩壊するまで、世界中のお金が豊富に流れこんでいたので、人工的に造られたものたちが馬鹿げて壮大で絢爛豪華なのです。
「世界一」が大好きなドバイ。世界最高ランクの“七つ星”ホテル(全室スイートルーム、アメニティグッズはエルメス!)、世界最大のショッピングモール、中東最大の人工屋内スキー場…。
それらが気温40度を軽く超える都市に林立する光景は、まさに砂上の楼閣。都市のすみずみまで毛細血管のように張りめぐらされた水道設備が止まれば、一瞬にして何もない砂漠に戻りそうな、奇妙な居心地の悪さ。
ドバイの街の不自然さは、雨と湿度の国に住んでいる私が本能的に感じてしまうもので、もしドバイで生まれ育った人が東京観光をしたら、こんなに雨ばかり降っているじめじめした街なんて住めやしない、と思うかもしれませんね。
いっぽうのギリシャは、最近になって財政危機のニュースが大きく報じられたばかりですが、さもありなんという優雅な無駄っぷり。ギリシャ人には「人件費の削減」という概念があまりないようで、美術館も伝統的なタベルナもあきれるほどスタッフが多いのです。
そして美術館のスタッフが展示室でどんな仕事をしているかといえば、すみの椅子に腰かけて、携帯電話でおしゃべりに夢中なのでした。なんておおらかで楽しい国なんでしょう。
ありがたいことに、ミコノス島もアテネも街じゅうカフェだらけでした。陽射しが強烈なので、みんなが水分と日陰を求めるのですね。
写真はアテネの繁華街、シンタグマ広場近くにあるカフェ。高級ブランドショップが並ぶ通りにある洗練されたカフェで、奥にはレストランが併設されていました。
携帯電話でお話し中のビジネスマンの前には、パフェとカプチーノ・フレド。この冷たいカプチーノはアテネでもミコノスでも大人気のドリンクで、みんなこぞって注文していました。
ちなみに、時刻は朝の9時。ヨーロッパの男性の多くはスイーツ好きなのですよね。人目を気にせず朝からパフェが楽しめるのは、まだ少数派の日本のスイーツ男子にとってはうらやましい環境に違いありません。
ショーケースには繊細で美しい造形のケーキの数々。そしてここは、私が飲んだなかでは一番エスプレッソがおいしいお店でもありました。
しかし胸が痛むことに、この素敵なカフェも2月の財政危機にまつわる最大のストライキ&デモ行進の際に、テラス席に並ぶ大理石のテーブルが破壊されたもよう。先ほどそれに言及した写真入りブログをみつけました。
私が見た限りでは、カフェに暴動の痕跡はかけらほども残っておらず、エレガントで穏やかな時間が流れていたのですが、ギリシャ政府がむやみに多い公務員とその給与の削減に手をつけて、財政の立て直しを本格的にわかりやすいかたちで始めないと、ビジネスマンが心ゆくまで朝パフェを楽しめる場所が再び損なわれてしまいそうです。

2010年06月25日(金曜日)
キャラメル・マッドスライドと路地裏の珈琲店
東京カフェマニア主宰 川口葉子
渋谷のSTREAMER COFFEE COMPANY(ストリーマー・コーヒー・カンパニー)といえば、以前の記事でもご紹介した、世界フリーポア・ラテアート・チャンピオンシップの優勝者、澤田洋史さんがオープンした旬のエスプレッソバー。
最初は見事なラテアート以外は目に入らなかったのですが、注意深く眺めていたら、他にも気になるドリンクをいくつか発見しました。その中のひとつが「キャラメル・マッドスライド」。
マッド=MADかと思ったら、泥を意味するMUD。
澤田さんによれば、「キャラメルをエスプレッソで溶かしたものを、ミルクと合わせたものです。MUDSLIDE=『ドロが滑り落ちる』。ミルクの上にキャラメル&エスプレッソのドロ状(リッチな味わいのキャラメルソース)の液体を流し入れます」
キャラメルはコーヒー系の風味と相性がいいですよね。暑いけれど風がスパークリングウォーターのように心地よかった昨日の午後、再びSTREAMER COFFEE COMPANYを訪れて、さっそくキャラメル・マッドスライドを注文。(写真上)
キャラメルの優しさとエスプレッソの力強さが融合し、ほんのり甘いのだけれど嫌みな後味がなく、すっきりと楽しめました。夏の疲れを癒す冷たい一杯としてふさわしく思われます。
STREAMER COFFEE COMPANYで働くバリスタたちは、カナダやニューヨークの有名カフェで活躍した経験のある男子が多く、最新のエスプレッソ・シーンの風を感じさせてくれるのが大きな魅力。
いっぽうで東京には、日本の偉大な珈琲人たちがきわめてきた珈琲の世界も、決して華やかな話題にはならないまでも、豊かに息づいています。
先日訪れた路地裏の小さな古い珈琲店で、棚の上に、亡き高名な焙煎人の名前を貼ったガラス瓶をみつけました。小さなガラス瓶の中には珈琲豆。2007年末に亡くなったその人の焙煎した豆が、遺品のようにして大切に保存されていました。
思わず「匂いをかいでもいいですか」とお店の主人に尋ねたら、「匂いは良くないの。(なにしろ焙煎して2年半以上が経過していますからね)でも、豆が強くて、生きている」
焙煎しているときに、ほんの数回だけれど神を見た……と語った亡き人の、想いと技術の強靱さの片鱗に触れたような気がしました。

2010年06月12日(土曜日)
アルトゥール&サブリナ 『バラとひまわり 』 A Rosa e o Girassol
東京カフェマニア主宰 川口葉子
『バラとひまわり』
Arthur & Sabrina
2010年6月4日発売
Rambling Records
ジャケット=福田利之
せつない胸のうちをそっとつぶやくような歌とアコースティックギターの響き。耳に残るアルトゥールのあたたかで誠実な声、サブリナの花のように可憐な声。
日本在住のブラジリアン男女のデュオ、アルトゥール&サブリナのデビューアルバム『バラとひまわり』発売を記念して、ブラジル大使館で気持ちのよいライブがおこなわれました。
司会進行の日本語担当は、このCDをプロデュースした鎌倉のカフェ・ヴィヴモン・ディモンシュのマスター、堀内隆志さん。本当に素敵な曲をつくるアルトゥールたちを応援したいという気持ちから、初のプロデューサー役を担当されたのだそうです。
※アルバムの内容とレコーディング風景が、堀内さんのブログで紹介されています。
才能溢れるアルトゥールはなんと弱冠20歳! ライブが始まる前に、ブラジル大使館の階段でたまたま彼とすれちがったのですが、柔らかい笑顔から、チャーミングな人柄が伝わってくるようでした。
深煎りのコーヒーを淹れて、いつまでも聴いていたくなるような音楽。夏休みに伊豆大島の実家でパワープレイ(?)することに決めました。
『バラとひまわり』はこちらで視聴できます。名曲「Edo」(江戸)の微笑ましいPVもぜひ! 「銀座線なのか…渋谷なのか、浅草に行くのか…」と歌われるこの歌、メトロのテーマソングとしても最高なのです。
歌詞がおいしそうなのも、心をとらえました。タイトル曲『バラとひまわり』にはデザートとコーヒーが歌われているし、バイーアの郷土料理だという『ヴァタパー』をタイトルにした曲もあるし、恋人と別れた孤独な夜を「フェイジャオンを作ってくれる人がいない夕食」と表現しているし。
ちょっと調べてみたら、フェイジャオンはどうやらお味噌汁のような位置づけの家庭的豆スープのよう。サウダージなスープなのでしょうか。

2010年06月06日(日曜日)
『FUTENMA360°』フテンマ:ようこそ、ドーナツタウンへ
東京カフェマニア主宰 川口葉子
今年の春、辺野古と並んで日本で最も話題にのぼった地名のひとつは、「フテンマ」だったかもしれません。アメリカ国防長官自身が「世界一危険な基地」と語った普天間。
私はその街の風景に、平均的な東京人よりもかなり多くの親しみと、それから不思議な感情を抱いています。何度も訪れたCAFE UNIZON(カフェユニゾン)はまさに普天間にあり、窓の外にはキャンプ・フォースターがひろがっているから。
先日、CAFE UNIZONから一冊のスペシャルなビジュアルブックとともに、こんなお知らせが届きました。
ようこそ、ドーナツタウンへ
米軍普天間基地を抱える、宜野湾市の素顔と魅力を
そのままに伝えるタウンブック『FUTENMA360°』が
完成しました!
なぜ360°かって? それは宜野湾市をドーナツに見立てているから。もちろんドーナツの中心の穴は、一般人立ち入り禁止の普天間基地。
中心が空洞になっている都市といえば、どうしたってロラン・バルトが綴ってみせた「皇居=不在の中心」を抱く東京を思い浮かべてしまうのですが、宜野湾市においては、ドーナツの穴は意味不在の空虚な中心どころではありません。
この本は、ドーナツである宜野湾市を「世界でも珍しい円環都市」と呼び、単に基地の街だけではない、フォトジェニックで多様な魅力を紹介する刺激的なタウンブックです。
(ページ見開き写真。首を90°かたむけてご覧ください)
秀逸なのは、現実の普天間に向けてシャッターを切りながら、それをリミックス、リデザインした仮想の完全円環都市「フティーマ」の絵地図として呈示しているところ。
※「フティーマ」とは、米兵たちによる普天間の異称だそうです。
基地のフェンス沿いに散歩する「フェンス・トレイル」、洞窟や森にひそむウタキなど、仄暗い異界に通じる「精霊指定地区」、迷路のような旧市街、アメリカの中古家具屋や雑貨店が並ぶオールド・アメリカン・タウン・・・一冊に凝縮された写真と文字の情報量は圧倒的!
たとえばいま、任意に開いた旧市街のページ「アコークローの街」の写真には、こんな言葉が添えられています。
「アコークロー」とは、「明るい暗い」。
つまり、夕陽の差し込む黄昏どきを表す沖縄語だ。
古き良き昭和の面影を湛えるこの街には、
そんな黄金色の色合いがよく似合う。
「イチャリバ・チョーデー(出会えば、みな兄弟)」
という言葉を実感できるのも、この街だろう。(後略)
「仮想都市「フティーマ」を紙上でぐるっとひと巡りするショートトリップ。本書はそれを通して、宜野湾の「今/現実」を知るガイドブックであり、来るべき基地返還という「未来/希望」へ向けたロードマップである」
本の詳細はこちら。唯一無二の宜野湾市ガイドブックとして、沖縄好きのかたはぜひお手元に。『FUTENMA360°』と『表徴の帝国』を同時読みするというのも、クールな楽しみ方かもしれません。

2010年05月30日(日曜日)
カフェとポール・オースターのスモーキーな関係
東京カフェマニア主宰 川口葉子
ポール・オースターが脚本を書いた『スモーク』は、映画マイ・ベスト10のひとつ。カフェのオーナーの中にも、ことのほか『スモーク』を愛している方々が多いのを感じます。
それはブルックリンの町角に佇んでいる、いかにもニューヨークの下町らしい煙草屋が、彼らの理想とするカフェの姿に似ているからに違いありません。
それぞれに心の痛みをかかえた人々が毎日、散歩ついでにふらりと入ってきては、煙草を買うついでに店主と立ち話をしていく場所。
たとえば、愛する妻の死という大きな喪失感を抱えながら、表面的には淡々と生きている小説家。彼は煙草屋の店主が「毎日、毎時刻に、決まった位置から店の前の大通りに向けてカメラのシャッターを切るんだ」と見せてくれた数千枚の写真の中に、亡き妻の姿が写っているのを発見します。
ありふれた日常にちりばめられている限りない奇跡。悲しみのなかに芽生える、あたたかな笑いと小さな希望。
拙著『京都カフェ散歩』のなかにも書き記したのですが、この映画にならって、毎日決まった時刻に、カフェの小さな店内から表のオープンテラスに向けてカメラのシャッターを切りつづけているオーナーがいます。
彼がコーノ式ドリッパーを使って淹れたコーヒーを楽しみながら、静かなカフェのテーブルで、撮影した写真集を見せてもらいました。
もしもこのアルバムの中に、亡き友人知人の姿をみつけたりしたら、私はあの妻を亡くした小説家そのものだと思ったのですが、さすがにそんなことは起こらず。
先週、ブログにポール・オースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』の日本版が開始される、と書いたら、それを読んだ東京のあるカフェのオーナーから、「じつは自分のカフェの名前は、映画『スモーク』の定点観測撮影からも来ているんです」というメールをいただきました。いつか、あの煙草屋のようなカフェになれたら、と。
べつの、ある小さなバールのようなカフェに取材に行ったときも、オーナーに理想のカフェを訪ねたら「『スモーク』の煙草屋のような場所」という答えが返ってきたことがあります。
それを聞いたら、もうすべてが納得できたように思われて、これ以上の質問は蛇足とさえ感じました。
またラストシーンで、カフェの片隅で向かい合う煙草屋ハーヴェイ・カイテルと小説家ウィリアム・ハートの顔にじんわりとひろがっていく微笑が、たまらなくいいんですよね。
やがて流れてくるトム・ウエイツの素晴らしいだみ声の歌とともに、忘れられない名場面です。

2010年05月21日(金曜日)
WIRED CAFEの贈りもの:CD『Feel』のふんわり名人
東京カフェマニア主宰 川口葉子
人気のWIRED CAFEが手がけてきたカフェ音楽のコンピレーション・シリーズ。好評につき4枚目がリリースされるそうです。スタッフからこんなメッセージが届きました。
WIRED CAFEが贈る、人気カフェミュージックコンピ
第4弾「Feel」が5月26日に発売です!!
今回は実際にワイアードカフェで働くスタッフに
アンケートを取って、それをカヴァーしコンパイルした、
今までにありそうで無かった新しい企画♪
そしてその楽曲たちを、i-depやBE THE VOICEを初め、
カフェシーンで人気のアーティストたちが
洋楽邦楽問わずカヴァーしてくれてます!!
やっぱり、心地よいカフェミュージックを一番知っているのは、
カフェのスタッフですよね!
是非その「Feel」を感じて下さい!
by common ground recordings スタッフ
カフェスタッフが選んだのはどんな曲? 興味を抱いてサイトをのぞいてみたら、エルトン・ジョンの「Your Song」、キャロル・キングの「 (You Make Me Feel) Like A Natural Woman」などの名曲に混じって、小沢健二の「ラヴリー」が。
かつて、小沢健二=オリーブ少女=カフェ、という素敵な三角形がつくられていた時代がありましたね。小沢健二とカフェは、エスプレッソとチョコレートのように親和性の高い組み合わせ。歌詞のなかにも喫茶店、お茶、ワイン、東京タワーが印象的に登場しますよね。あ、東京タワーはカフェとは関係ないけれど。
そんなわけで、さっそくサイトで視聴してみたら、歌っているNAOMILEさんのスイートな声にびっくり。プロフィールにはこう書かれていました。
一度聴いたら忘れる事の出来ない女性らしく温かみのある歌声から、
巷では「ふんわり名人」と呼ばれている。
ふんわり名人! 素敵なネーミング。
BE THE VOICEが歌うエルヴィス・プレスリーの「ハートブレイク・ホテル」は、50年代のメンフィスの香りがした傷心ホテルではなく、まさに2010年のカフェの香りがする傷心ホテル。
10曲すべてが、カフェの空気をたっぷりと感じさせてくれるアルバムです。

2010年05月14日(金曜日)
『東京ふつうの喫茶店』泉麻人
東京カフェマニア主宰 川口葉子

『東京ふつうの喫茶店』(平凡社)
Amazon、書店などで予約受付中
泉麻人さんといえば散歩エッセイの大先輩。歩いたりバスに乗ったりしながら見聞きした東京の街角の文化を、独自のキレのある視点、肩の力の抜けた軽やかな文章で綴ってこられました。
80年代の泉さんの作品『ナウのしくみ』は、バブル期の空騒ぎをシニカルな観察眼とコミカルな文体でとらえた名著。いま読みかえすと、あらためて多くの発見があります。
当時から20年以上を経た現在の泉さんのコラムの魅力は、飄々としたおじさんぶりと、そこはかとなく漂う「東京育ち」のエスプリ。かつて赤塚不二夫の「シェー」のポーズを熱心にやっていたであろう都会の子、という空気が感じられるのです。
その泉麻人さんが、平凡社から新刊『東京ふつうの喫茶店』を上梓されました。これは2008年末まで読売ウイークリーに連載されたエッセイと、読売ウイークリーの休刊後、平凡社のWebサイトに移動して『喫茶店ブルース』のタイトルで続けられている連載をまとめたものです。
巷にカフェは増えたけど、
昔ながらの“喫茶店”はめっきり減ってしまった。
カフェラッテやらエスプレッソマキアートやらを
紙コップのフタの小穴からチューチュー吸いながら
町を歩くのもたまにはいいが、
中年男としてはかつて“サテン”と呼んでいたような
店の方が落ち着く-- 『喫茶店ブルース』扉より
たとえば、カフェ好きの方々もよくご存じであろう高円寺の老舗「七つ森」については、こんなふうに綴られています。
ちなみに、私が「七つ森」オーナーの松沢忍さんにインタビューさせていただいたお話しはこちら。
比較すると面白いのですが、私の場合は「七つ森について知りたい取材者がインタビューした」というスタンス。
それに対して、泉麻人さんの場合は「ふらりと喫茶店に立ち寄って、カウンターの中の人に声をかけて聞いた小話」なんですよね。
そのゆるくて淡々とした感じがまた、紹介されている「ふつうの喫茶店」の空気感と呼応しているのです。そのなかに、時おりきらり光る観察眼の鋭さはさすが。
喫茶店好きの方はお手元にぜひ一冊! 甘く可愛らしい乙女メガネを通して眺めるレトロ喫茶店ではなく、おじさんメガネを通して眺める喫茶店の世界が満喫できるでしょう。

2010年05月08日(土曜日)
「呼ばれる」 喫茶編・担々麺編
東京カフェマニア主宰 川口葉子
連休はいかがお過ごしでしたか。
私はある男性誌に「コーヒーのおいしい喫茶店を10軒紹介してください」と依頼され、担当ライターの方に「ぱっと見ただけで、その喫茶店のコーヒーがおいしいどうか判断できるポイントはありますか?」などと、いささか無茶な質問を受けておりました。
そもそも、私の喫茶店さがしの発端は学生時代。卒業制作の小説書きに集中するために、喫茶店を必要としていたのです。
しかし、いくらお財布のさみしい学生とはいえ、コーヒー一杯であまりに長居するのはさすがにはばかられます。
おかげでつねに原稿用紙と辞書と鉛筆を抱えて街を歩きながら、落ちついて小説の書けそうな喫茶店を探すくせがついてしまったのです。
その時代につくられた下地と、長い会社員時代に散歩ついでにカフェを捜す習慣があったおかげで、動物的な勘が磨かれて、ときどきおいしいコーヒーのほうが私を呼んでくれることがあるんですよと申し上げたら、ライターのかたが「ああ!」と声をあげました。
「以前、担々麺をとりあげた回で、担々麺の探求者が同じことを言っておられました。担々麺に呼ばれることがあるんだそうです」
担々麺に‥‥、呼ばれる‥?
「路地裏に迷いこんで、担々麺などありそうもない古くて小さな中華料理屋の前を通りかかったときなんか、不思議にぴんと来て入ってみると、メニューのすみに担々麺があったりするんだそうですよ。やっぱりいつも担々麺を捜しているうちに、自然に担々麺に呼ばれるようになったんだとおっしゃってました」
求めよ、さらば与えられん。それにしても、世の中にはちょっと毛色の変わったものを探究する人がいらっしゃるものですね。

2010年04月23日(金曜日)
ラテアート・チャンピオンのSTREAMER COFFEE COMPANY オープン
東京カフェマニア主宰 川口葉子
STREAMER COFFEE COMPANY
(ストリーマー・コーヒー・カンパニー)
【住所】東京都渋谷区渋谷1-20-28
【TEL】03-6427-3705
【OPEN】8:00~18:00、日休
【MAP】Yahoo!地図情報
フリーポア・ラテアートのワールドチャンピオン、澤田洋史さんがご自身のコーヒーショップをプロデュース。4月22日の夕方にオープニング・レセプションがおこなわれました。
澤田さんといえば、ニコンのCMに出演し、木村拓哉の目の前でするするとラテアートを描いてみせるシーンが印象的。また、マックカフェの広告に使われたラテアートも澤田さんが描いたものです。
その澤田さんが初プロデュースするお店は、イタリアの歴史あるバールではなくて、完全にアメリカのストリート仕様でした。細部まで緻密につくりこんだデザインよりも、ライブ感溢れるざっくりしたデザインを志向。
壁に飾られたスケートボードが象徴的ですよね。このボードの上にも、澤田さんのシンボルである「トリプルロゼッタ」がデザインされていました。(写真右下)
各方面から注目を集めているのでしょう、店内は大盛況で、カウンターの前には長蛇の列。澤田さん率いるバリスタチームが、休む間もなくラテを作り続けています。
小さな紙コップなのに、トリプルロゼッタ!
描いてもらった男性が感動して
「えーと、この模様はなんだっけ、トリプル・・・」
と言いかけると、すかさず友人らしき人が
「ルッツ!」
と言い添えて、後ろに並んでいた私は笑いをこらえました。
私のほうは、頭の中で
「サルコウ!」
と続けていたのです。大輔・真央選手の応援のしすぎですね。
澤田さんがせきたてられるようにコーヒーショップをオープンしたのは、ニコンやマックカフェのCMを見た人々から、「あのラテアートはどこで飲めるの?」という、ほとんどクレームに近いほどの熱烈な要望があったため。
渋谷に出かけたら立ち寄ってみてくださいね。端正で格調高いラテではなく、ワイルドで美しいラテが目の前でつくられていく楽しさ、そしておいしさを体験できるでしょう。
なにしろ完璧なラテアートは、エスプレッソの抽出が成功していること、ミルクが正しい温度できめ細かく泡立てられていることの、最高の証拠なのです。

2010年04月16日(金曜日)
銀座トレシャスのヴェネチア料理、バーカロ『バラババオ』
東京カフェマニア主宰 川口葉子
4月16日、つまり今日、銀座2丁目に商業施設「銀座トレシャス」がオープンします。
プレス内覧会に行ってまいりましたので、カフェ好きの方は後日、All Aboutg[カフェ]上で、渋谷から銀座に進出したSUZU CAFEの詳しい記事をご覧いただけましたら幸いです。
こちらでは、銀座トレシャス9階に誕生した「BARABABAO(バラババオ)」という早口言葉みたいな店名のバーカロについてお伝えしましょう。
イタリアワインも小皿料理も種類豊富、リーズナブルで使い勝手の良さそうな一軒です。
▼BARABABAO(バラババオ)
東京都中央区銀座2-6-5 銀座トレシャス9F
Tel 03-3535-7722
メトロ「銀座一丁目」駅より徒歩1分・「銀座」駅より徒歩5分
バーカロとは、ヴェネツィア地方特有のオステリア、つまり料理の充実した居酒屋のこと。メニューの主役はワインとチケッティ(小皿料理)。スペインのバル流に言えばタパスでしょうか。
BARABABAOはヴェネツィアで100年以上続く老舗のバーカロを再現。シェフも現地バーカロで修業し、バーカウンターなどのインテリアもみなイタリアから直輸入したそう。
お店を入ると、まずバールの立ち飲みコーナーがあり、奥に食堂スペースがひろがっています。真っ先に目を奪われたのは、天井に吊られたたくさんのお鍋。これも本場のスタイルなのだとか。
ヴェネツィアは海の幸に恵まれた都市で、自慢のチケッティにも魚介類を駆使。もちろんバラババオにも充実した魚介料理の数々が並んでいました。
とりわけおすすめの一皿は、自家製の生パスタを使った「魚介のラグーソースのフェットチーネ」(1380円・写真)。
店長さんはソムリエでもあるとのこと。このフェットチーネに合うワインを訊ねたところ、同じフリウリ州産の白ワイン、LIVONのミュラー・トゥルガウを勧めていただきました。ほのかな優しい甘み。これがなんとグラスで410円! 120種が揃うイタリア直輸入ワインは、グラスで300円から楽しめるのです。
それにしても、私たちは食を通して次々に海外の文化を覚えていきますね。
企業に入社したばかりの新人だったころ、私がまず知ったのは「リストランテとトラットリアの違い」でした。それから「ピッツェリア」「オステリア」「バール」などという言葉に次々に出会っていきましたっけ。
ここにきて、バーカロ。もはやイタリアのあらゆる料理店のスタイルが、東京に持ち込まれたような気がしてきますね。それともイタリアはまだ、私たちの知らない隠し球を持っているでしょうか?(持っていてほしいものです)