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2009年06月19日(金曜日)

『カフェに教わるおいしいごはん』発売になりました

東京カフェマニア主宰 川口葉子

090819kawag1.jpg6月18日、『カフェに教わるおいしいごはん』(宝島社・880円)が発売になりました。
月刊スプリング誌に私が連載してきたコーナー「カフェに教わるレシピ」の2年間分の掲載をまとめて収録。さらに20軒以上のカフェを新たに取材し、キッチンにおじゃまして教えていただいたお料理やドリンクを収めてあります。

もうずいぶん長い連載で、これまでにも何度かムック化されてきたのですが、今回初めての試みは「インテリア」「コーヒー・紅茶・日本茶」にスポットを当てた特集コーナーを設けたこと。後者では、それぞれの飲みもののおいしい淹れかた、アレンジのしかたを各カフェに教えていただきました。

090819kawag2.jpg写真右上のカフェは、吉祥寺の「お茶とお菓子 横尾」。
拙著『カフェの扉を開ける100の理由』でもご紹介させていただいた美しい空間ですが、半年ほど前から、もうひとつ小さな部屋が増えて、広くなっています。同じ建物の隣に入っていた小さな店舗が空いたので、横尾と壁をつなげてひとつづきの空間にしたのですって。
横尾には「比内地鶏のそぼろごはん」と「焼き鮭のまぜごはん」の作りかたを教えていただきました。

写真は5人のカメラマンが担当。基本のトーンは統一しながらも、カメラマンによって、やはり撮り方に少しずつ個性が表れるのが面白いものですね。

撮影のあいまの待ち時間に、カメラマンと編集者と3人で、「今回、撮影後に試食したなかで最もおいしかった料理はなに?」「最もキッチンが狭くて、撮影が大変だったカフェはどこ?」なんていう茶飲み話をして楽しみました。
限られたスペースのなかで、最大限の合理化をはからなくてはいけないカフェのキッチン。2人並んで立つことのできないほど小さな厨房もあるのです。

写真右の下のページは、松陰神社のCafe Lottaで教えていただいた「ゴルゴンゾーラと栗のペンネ」。昨日、別の撮影で再会したした女性カメラマンが「私が撮影したなかでは、これが最も忘れられないおいしさでした」とコメントを聞かせてくれました。

巻末には各カフェのご紹介とショップデータも収録して、カフェのガイドブックとしてもお使いいただけます。ぜひ書店やAmazonでご注文くださいますように!

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2009年06月12日(金曜日)

神楽坂の路地歩き~カグラザカヨコロジー

東京カフェマニア主宰 川口葉子

090612kawag.jpg小さな美しい日本茶カフェ、茜や(あかねや)さんから、「カグラザカヨコロジー」のお知らせが届きました。素敵な催しなので、ぜひ皆さまにもお伝えしたく思います。

「散歩でめぐる一日世界旅行 in 神楽坂」をテーマにしたカグラザカヨコロジーは、神楽坂の路地にある個性豊かな雑貨店、カフェ、ギャラリーが、6月だけの期間限定で「世界の各国に変身します」というもので、路地歩き=各国めぐりのための素敵なパスポートが作られています。

茜やさんには6月19日(金)から21日(日)までの3日間、チェコの古い絵本を中心に、東欧の雑貨や日本の古い絵本が並びます。
カドは同じ3日間が「中国茶と月餅期間」に。中国茶と手作り月餅のセットは14時~16時の限定でいただけます。

昼行灯ろびん、赤提灯ろびんは、19日(金)から26日(金)まで、「何もなくても豊かな島~カオハガン」と題してフィリピンの島に変身。写真展示、グッズ販売、カオハガン島の料理人直伝のメニューが用意されるそうです。
マンヂウカフェmugimaru2のテーマはメキシコ。20日(土)19時からはメキシカンフード付きでマリアッチのライブですって。mugimaru2のことは拙著『カフェとうつわの旅』でもご紹介させていただきましたが、お店にいる銀色の美猫の名前はマツ子さん。捨て猫だったそうですよ。

それから、日本橋の素晴らしいギャラリーカフェ、馬喰町ART+EATと同じ古いビルに入っているドイツ雑貨のお店「MARKTE」が期間限定でギャラリーにやってきたり、手仕事の器ラ・ロンダジルがパリのプチ・マルシェになったり……ほかにも、楽しい催しがもりだくさん。

来週末のスケジュールは神楽坂の路地歩き。いらっしゃるかたは、15店舗の参加店のうちのどこかで、パスポートをいただいてくださいね。各店舗でシールを集めると世界地図が完成するようです。

▼詳細は期間限定カグラザカヨコロジーのblogで。

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2009年06月07日(日曜日)

麺のない国の料理はまずい?!

東京カフェマニア主宰 川口葉子

090607kawag1.jpg再び1週間ばかり京都に滞在してきました。あちこちのカフェでお話をうかがうなかで、お店の人から何度か名前が出たのがRabbit Coffee(ラビットコーヒー)。休憩しにいくのはRabitt Coffee、なんでもない喫茶店のたたずまいが魅力なんです、と。

そのRabitto Coffeeのオーナー高橋さんは、もとレコード会社勤務。旅好きで、アーティストのレコーディングに同行するのと個人の旅行で、これまでに世界をほぼ2周!という体験の持ち主です。お話が楽しくて、ついカフェに関係のないことばかり質問してしまいます。

そんな高橋さんの持論のひとつは「麺のない国の料理はまずい」! 彼にとって、世界三大美味はイタリア料理、中華料理、日本料理で、いずれも料理のなかで麺というジャンルを発達させてきました。

「イギリス料理がまずいのも、伝統的なフランス料理が落ち目なのも、麺がないからです」

高橋さんによれば、洗練された日本の麺のなかで最もおいしのが、なんと、カレーうどん。それも、うどんを中華麺に変更した「カレー麺」は京都がすばらしいのだそうです。メニューを見回して中華そばがあるお店では「カレーうどん、麺は中華麺で!」とオーダーするのが正解。

「東京はものごとを凝った方向に洗練させてしまうから、カレーうどんにもアジア系のスパイスを効かせすぎたり、これではフォーだ、というようなカレーうどんになってしまうんです。古奈屋もそうですね」

090607kawag2.jpg高橋さんにとって、正しいカレーうどんのカレーは“うどん屋の作るカレー”でなければならないのです。それがきちんと継承されているのが京都。

「京都は、いろいろな味が古い時代に完成した町だから」と高橋さんは分析します。新奇な味は導入せず、昔ながらの味を守りつつ洗練させていくのでしょう。

カレーうどんなんて数年前に古奈屋で1度食べて以来だったのですが、Rabitto Coffeeでそんなおもしろいお話を聞いたらむしょうに食べたくなり、三条京阪駅前で目についた「みや古」といううどん屋さんに吸い寄せられるように入ってしまいました。

地味な店構えの小さなお店ですが、入るなり迎えてくれたのは、「自家製玉子麺(中華麺)カレーそば:売り切れ御免」の札! もしかして京都では、カレー中華麺が流行中なのでしょうか?

もちろん、注文したのはカレー中華そばです。たまご味のしっかり効いた中華麺に、“だし文化”の発達した国ならではのカレー。カレーにたまごを落としたのと似たようなマイルドさになるんですね。そして、カレーに浮かぶ国産牛肉のやわらかなおいしさ。なるほどなるほどと、感心しながら食べたのでした。

みや古の店内には、市田ひろみさんから贈られた「本当においしいカレーうどん!」という額が飾られていました。

Rabbit Coffee(ラビットコーヒー)
京都市中京区河原町御池下ル 福三ビル2F
TEL 075-255-7163

みや古(みやこ)
京都市東山区三条大橋東入ル二町目79
TEL 075-771-4905

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2009年05月29日(金曜日)

CAFE USEの琥珀玉!

東京カフェマニア主宰 川口葉子

090529kawag.jpg雑誌の取材で下北沢のCAFE USEにおじゃましたときのこと。
ファイヤーキングのカップとソーサーが並ぶカウンターに立った店主の古市さんに、コーノ式ドリッパーでコーヒーを淹れる手順を説明していただきました。

その途中で古市さんが口にした言葉が、私をとらえたのです。「琥珀玉」と。

「コーヒーをドリップしている最中に、よく琥珀玉が見えるんです」

琥珀玉とはいったい?! 編集部の人とカメラマンと私は、いっせいに古市さんの手元をのぞきこみました。
ドリッパーの穴から、コーヒーが数滴ずつサーバーにしたたり落ちていきます。

「まだ、見えないですよ。もうちょっとコーヒーがたまってきたら」
「何が見えるのですか」
「コーヒーの表面を、琥珀色の玉がころころと転がるんです。なんとか大学の先生の研究によれば、琥珀色の玉が走るのは、コーヒー豆の焙煎や挽き方がうまくいっている証拠なんだそうですよ」

それはぜひとも目撃しなくては。3人そろってコーヒーの表面を凝視して、ほぼ同時に声をあげました。
「あ、今の?!」

直径2mmくらいの小さな琥珀色の玉が、コーヒーがしたたり落ちる真下に出現したかと思うと、流れ星のようにコーヒーの表面を転がって、ガラスにぶつかり、消えていきます。ひとつぶ現れては消え、2,3つぶ続けざまに現れては消え……。

「撮ってください!」
いきなり私に懇願されて、カメラマンは連写状態。でも、琥珀玉が小さすぎるのと速すぎるのとで、なかなかうまくいきません。
その光景は本当に流星群のようでした。琥珀玉が消えるまでに願いごとを唱えれば、なんでもかないそうな。

右の写真が、このときカメラマンがとらえてくれた琥珀玉です。(片岡さんありがとう) 

自宅に戻ってから、さっそく自分でもコーヒーをドリップして確認してみると、出現しました、琥珀玉。おいしいコーヒーのシンボル。夫を呼んで見せてあげました。

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2009年05月22日(金曜日)

渋谷駅高架下、cafe SIPHON(カフェシフォン)の幻想ブレンド

東京カフェマニア主宰 川口葉子

渋谷の街を歩き回ってくたびれてしまい、駅前まで戻ってきて、ああ、腰をおろしてコーヒーが飲みたい…というシチュエーションは、かなり絶望的です。
もはや茶亭羽當まで歩く元気はないし、デパートの中のカフェに入るのは気がすすみません。

そんなときに目に飛び込んできたのが、山手線の高架下にある小さなカフェ。新橋のガード下のようだと思いながら入ってみたら、意外にも快適な時間が過ごせてしまったのです。

狭い空間に、ぎちぎちに並べられた椅子。形而上的(?)には分煙になっていて、入口付近は喫煙席、奥は禁煙席です。

壁にはモノクロームの写真、BGMはスタンダードジャズと、予想外のセンス。その時間、お客さまは3人だけということもあって、窓の外はせわしない雑踏なのに、妙にくつろいでしまいました。

カウンターに並んでいるのはコーヒーサイフォン。ああ、だから店名がSIPHONなのだなと、いったん納得しかけたのですが、店名はシフォンと発音するそう。なんとなく腑に落ちないけれど、あえて問いかけるほどの気力は残っていなくて。

しかし、ブレンドコーヒーの名前については質問せずにはいられませんでした。メニューの中に発見したおすすめのコーヒー、「幻想ブレンド 550円」。
気になってたまりません。ショパン? ベルリオーズ? シューマン? 吉本隆明?

落ち着いた年代の、感じの良い女性スタッフに「幻想ブレンドとはどういう意味ですか?」と訊ねてみたのですが、「いえ、あの、単にブレンドの名前なんですよ」と、拍子抜けするお返事でした。

090522kawag.jpgサイフォンごと運ばれ、目の前で注がれた幻想ブレンドは、たっぷり2杯分ありました。決して悪くない風味。チェーン店のコーヒーよりずっと充足感を与えてくれます。

ハム&チーズのトーストなどいう喫茶店の王道メニューを追加して楽しんでいると、喫煙席に座っていたアラブ系の青年が立ち上がってお会計。

青年は女性スタッフが渡そうとする釣り銭を受け取りません。チップだと言っているようなのです。
百円玉が二人の手の間を往復したあと、青年は身をひるがえしてお店から出ていってしまいました。
「チップはいらないんですー!」
と、青年を追いかける女性スタッフ。

いまどきのカフェではあまり見かけない光景に出会った、と思いました。まことになんでもないひとコマですが、私は高架下カフェの記憶としてその瞬間を胸にしまいこみました。何年も過ぎれば、幻想のように思えるかもしれない日常のカケラ。

cafe SIPHON(カフェシフォン)
東京都渋谷区渋谷2-24-26 JR高架下
TEL 03-3407-9144
OPEN 7:00~22:00

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2009年05月15日(金曜日)

リニューアルした新宿マルイに、スターバックス「ブラックエプロン」

東京カフェマニア主宰 川口葉子

090515kawag.jpg4月24日にリニューアルオープンした新宿マルイ本館には、なんと2階と8階の2フロアにスターバックスが入っています。
このうち、2階のスターバックスは「ブラックエプロンストア」。しかもスタッフの全員がブラックエプロンというスペシャルな店舗。

スターバックスで働く人々は、通常は濃いグリーンのエプロンを着用しています。黒いエプロンは、コーヒーの知識の豊富なスタッフだけに与えられる、いわば“黒帯”。バリスタたちはブラックエプロンをめざして努力を重ねているのですって。

マルイ2階フロアの広い一角を、シックで落ち着いた内装でまとめたスターバックス・ブラックエプロンストア。窓辺には一人専用のソファ席などもあり、なかなか居心地がよさそう。

入って右側にはカウンター席が4つばかり設けられていて、この席でだけ、フレンチプレスで抽出するコーヒー各種、25種類以上を楽しむことができます。

たとえば、メニューに「ハーブやスパイスの風味が特徴」と説明されているアジア・太平洋地域産のコーヒーなら、ハワイの100%コナ(1杯1200円!)から力強いスマトラ(1杯420円)まで、6種類の豆が並んでいます。

中にはこの店舗でしかいただけない豆も5種類ほど。せっかくですから新宿マルイ限定を試してみたいと担当の女性スタッフに伝え、5種類の中から「ブラジルブレンド」を選んでみました。

スタッフによる説明は、メニュー全体について広く浅く概略を伝えるという感じ。初来店のお客さまに対して、いきなりマニアックなコーヒー・トークはしないのでしょう。笑顔を絶やさず、きびきびと豆を挽き、フレンチプレスとカップをセッティングしてくれました。

もちろん、レジカウンターに並べば、カプチーノやフラペチーノなど通常のメニューがいただけます。おもしろい体験でしたので、次回はほんの少し、コーヒー好きらしい質問をしてみようと思います。

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2009年05月09日(土曜日)

美食家エルキュール・ポアロの朝食はブリオッシュと熱いチョコレート

東京カフェマニア主宰 川口葉子

5月に新刊が発売になりました。全国の書店やAmazonでお求めいただけます。見かけたら、ぜひ手にとってみてくださいね。

執筆中、私たちライター3人の自宅の冷蔵庫のなかは、つねにショコラ各種がいっぱい! なにしろ私の名前の中には「チヨコ」の三文字が隠れていますから、チョコレート・ジャンキーになるのは運命づけられていたのです…。

090509kawag.jpgショコラの時間
【出版】 青山出版社
【著者】 川口葉子/藤原ゆきえ/江沢香織
【定価】 1600円+税

芳醇な香り、とろける甘い口どけで、
たちまち心を虜にしてしまう魅惑のスイーツ、ショコラ。
そんなショコラの誕生物語から、
世界の美味が楽しめる東京のショコラトリー案内40軒!
そして、ショコラを使ったおいしいレシピ、
映画や小説に登場するショコラのスイート&ビターな瞬間など…
その魅力のすべてを詰め合わせてお届けします。

第4章「シネマのショコラ・言葉のショコラ」から、以下にほんの一部をご紹介しましょう。

* * * * *

美食家エルキュール・ポアロの朝食は
ブリオッシュと熱いチョコレート

アガサ・クリスティのペンが生んだ私立探偵エルキュール・ポアロは、黒髪に緑の眼、小柄な体躯に大きな口髭をたくわえて異彩を放つベルギー人。自己の頭脳に絶大な信頼を寄せています。

彼の口癖は有名な「私の灰色の脳細胞」と、不満なときにもらす感嘆詞「チャー!」。友人のヘイスティングス大尉によれば「チャー!」は猫のくしゃみにそっくりだそうですが、いったいポアロはどんなふうに発音するのでしょうね?

チョコレート王国ベルギーからロンドンに亡命してきたせいなのか、アフタヌーンティーにもホットチョコレートを愛飲しているポアロ。ヘイスティングスの目には「100ポンドもらっても飲む気になれないようなこってりしたチョコレート」と映りますが、ポアロの弁によれば、紅茶なんて「イギリスの好むまずい飲みもの」。カフェイン抜きのコーヒーは「ああ、そんなもの、まっぴらごめんです!」

美食を愛するポアロの朝食のテーブルには、甘い湯気がたちのぼるホットチョコレートと、チョコレートによく合うブリオッシュが並びます。ポアロは何軒ものお店のブリオッシュを試した末に、デンマーク人の経営するパティスリーのものを選んだのです。

クリスティが初めて手がけた戯曲『ブラックコーヒー』の小説版は、ポアロがいつものようにホットチョコレートとブリオッシュで朝食をとるシーンから始まっています。いったん決めた習慣をめったに変えないポアロなのに、その朝に限って珍しく従僕に2杯目のチョコレートを所望したのは、事件が起きるという虫の知らせだったのでしょうか。

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2009年04月26日(日曜日)

京都人イケズ伝説

東京カフェマニア主宰 川口葉子

090426kawag.jpgこのところ、秋に出版する本の取材のために、京都に1週間ずつ滞在することが増えています。
先週も昨晩まで京都にいたので、このほんわか茶飲み日誌を更新するのが日曜日の夕方になってしまったわけですが、京都でお店の人にインタビューをするたびに、尋ねずにいられないのがイケズ伝説の真偽です。

創業1781年という祇園の有名な老舗「いづう」の静かな店内で鯖寿司をいただいたときのこと。隣のテーブルに座った旅行者らしきご夫婦が、お店の女性におそるおそる尋ねました。

「京都の飲食店では、帰るときに、お店の人に外までお見送りされたら、それは『二度と来るな』という意味なんでしょうか?」

お店のおばさまはもうひとりの従業員と顔を見合わせ、そんな話は初めて聞きますわ、決してそんな意味はないと思います、と笑って旅行者を安心させていました。しかし、こんなたぐいの不安を旅行者に抱かせることが、まさに「イケズ伝説」が全国に広く流布している証拠ですね。

私も取材の折に、単刀直入にお店のかたに質問してしまいます。

「京都のひとはイケズですか?」

年配の人々は「そらあもう、イケズですわ!」と太鼓判を押し、若い人々は「うーん…私たちの世代ではあまり感じませんね。京都出身じゃない人も多いし」と笑い、「でも、古くからの住民の方々は、じっとりとした物言いをしますね」とつけ加えます。

さる女性店主が話してくれた、おばあちゃんのイケズな物言い。彼女の姑は生粋の京都人で、彼女がお正月などに夫や子どもを連れておばあちゃんの家に行くと、
「絶対に泊まってほしくないくせに、『今夜は泊まってくれはるんやろ?』という言い方をするんです(笑)」

別の女性店主が話してくれた、近隣住民の物言い。住民は「昨晩はお店のお客さまの声が外まで響いてうるさかった」という苦情を言いにお店に来たらしいのですが、その話の切り出し方といえば、

「洗濯物が風で飛んでしまって、ちょっと拾いに来たんやけどな。そういえばゆうべはおたく、だいぶにぎやかだったらしいなあ」

風のまったく無い日でも、京都人の洗濯物はよく飛ぶようです!

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2009年04月18日(土曜日)

「隠すものがない」ということ

東京カフェマニア主宰 川口葉子

090418kawag.jpg4月1日にオープンしたツチオーネは「大地を守る会」が初めて作ったカフェ。メニューなどの詳細はこちらでお伝えしています。

先日あらためてツチオーネを訪れ、2年間にわたってカフェのオープン準備に力を注いできたお二人にお話をうかがいました。そのなかで印象的だったのが「隠すものがないので、オープンキッチンにしたかった」という言葉です。

30年以上にわたる全国の生産者たちとのおつきあいを通して生まれた信頼関係。安心して食べられる野菜から、たまご、調味料にいたるまで、このカフェのキッチンで使われる食材は、お客さまに対して、誰がどんなふうにつくっているかきちんと説明できるものばかりなのです。

写真下はほくほくのじゃがいもと半熟卵を自家製のマヨネーズで和えた一皿。添えられた葉野菜をさして、シェフが言いました。
「これを栽培しているのは、農家の7代目の人なんですよ」

野菜を育てているのがどんな人なのか、しっかりと顔や環境が見えているのですね。

人間は長いあいだ生きていれば、誰でも心の中に隠しておきたい傷のひとつやふたつ抱いていると思いますし、隠しておいたほうが素敵な秘密もありますが、少なくとも自分の手で生み出して人にさしだす仕事だけは、後ろめたいものはない、これを作るときに怠け心が入り込む隙間はなかったと、いつも胸を張れるようでありたいものです。背筋ののびる思いでした。

ツチオーネ
東京都世田谷区奥沢6-25-10
TEL 03-5706-0707

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2009年04月10日(金曜日)

サンフランシスコ、「消防署料理」のレシピ!

東京カフェマニア主宰 川口葉子

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(写真提供:なかがわかずこ)
上から:
カリフォルニアの映画館
アメリカのインド料理教室。美しい先生はインド人
アメリカの家庭料理教室の風景
なかがわさんのお嬢さんはドッグトレーナー


  「サンフランシスコのどの消防署にも
   オリジナルなシーザーサラダがあり、
   ユニークな食事の伝統がある」

     『FIREHOUSE FOOD COOKING WITH
     SAN FRANCISCO'S FIREFIGHTERS』 より
       (なかがわかずこ訳)

なかがわかずこさんというアメリカ料理研究家がいらっしゃいます。彼女は5年間にわたってアメリカ生活を送り、カリフォルニアとニューヨークで3人の子どもを産み育てるあいだに、多彩な民族の食文化が融合したアメリカ料理の魅力に開眼しました。

そのなかがわさんが大切にしているアメリカ料理の本の一冊に、『FIREHOUSE FOOD COOKING WITH SAN FRANCISCO'S FIREFIGHTERS』があります。訳せば、サンフランシスコ消防署の消防士たちが作るまかない料理!

なかがわさんからお話を聞いて、そのおもしろさと、充実した料理の数々、そしてひとつひとつの料理の背景に横たわる消防士たちの物語にすっかり魅せられてしまいました。

ファイヤーファイターズ、つまり消防士たちは毎日、消防署のキッチンで自分たちの食事をつくります。
24時間のハードな勤務体制のなか、みんなでダイニングテーブルを囲む食事の時間は最大の楽しみ。
そして、もしかしたらその日の消火活動で自分が命を落とす可能性だってあるわけですから、どのごはんも“最後の晩餐”なのです。

美食レストランの多さでも有名な“フードタウン”、サンフランシスコ。街の消防署にはアメリカ人もいれば、メキシコ人、アジア人、イタリア人もいます。彼らが作るまかないごはんは、その日の料理当番の故国の“おふくろの味”とカリフォルニアのテイストがミックスしたものになります。

消防士たちのレシピは、簡単、豪快、そしておいしい! 消防署のキッチンで細かな下ごしらえをする余裕などなさそうですから、手早く作れるレシピでなければ実用に適さないのでしょうね。テーブルについた食欲旺盛な仲間たちに、自分の家庭料理を「おいしい!」と言わせたくて、料理当番はあれこれ工夫しながら腕をふるうのでしょう。

街の人々のピンチを救うことに真摯な情熱を抱いているサンフランシスコの消防士たち。彼らは火災現場に駆けつければ火を消すために果敢に飛び込み、キッチンに入れば、大事な仲間に舌鼓を打たせるためにコンロに火をつけるのです。

  「もし火災の通報があって出動したら、
   何に遭遇することになるか、
   自分がどうなるかわからないだろう?」
   勤続25年のベテラン消防士、カート・“突撃”・ニールセンは言う。 

  「だから、でっかく生きて、でっかく食べるのさ。
   どの食事も、しっかり満足できるものであるように。
   なぜかって?
   どの食事が最後になるかわからないんだから」

            『FIREHOUSE FOOD COOKING
             WITH SAN FRANCISCO'S FIREFIGHTERS』 より

なかがわかずこさんに、消防署のまかないレシピの中から1品を作っていただきました。ぜひ感動をお伝えしたくて、来週のAll ABout[カフェ]でご紹介させていただきます。

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